磁気科学グループ

磁気科学は黒板やホワイトボードに固定用として使われている一般的な磁石(フェライト磁石)の数百倍の強磁場を利用した研究です。このレベルの磁場になると、非磁性といわれている物質も何らかの力学的な影響を受けます。最近の日本発の超伝導技術や4Kレベルまで冷やせる低温技術のおかげで液体ヘリウムなしの超伝導ソレノイド磁石が開発され、これまで強磁場専門の研究所でしか行えなかった磁気科学研究が研究室レベルでも可能になっています。したがって、磁気科学は非常に新しい学問分野であり、岸尾研では、液体窒素冷却でも動作する安価な超伝導磁石やそれに組み込む超伝導線材の開発に関する研究を行うと同時に、超伝導マグネットをどのように使うか(使えるか)といった超伝導磁石の普及に関わる応用的な研究も進めています。

Fig.1 Fig.2
Fig. 1. 熱電変換セラミックスの層状構造の模式図    Fig. 2. 磁場による熱電変換セラミックスの配向化

具体的な研究内容の一例をここで紹介します。岸尾研では、強磁場による配向効果を熱電変換セラミックス材料や超伝導セラミックス材料の配向組織制御に利用しています。これらの物質の結晶構造は共通して「層状構造」と呼ばれる2次元的な構造(Fig.1)をもっていて、熱電特性や超伝導臨界電流など機能性に優れる結晶方位が存在し、実際には2次元面方向が優れた性能を示します。通常のセラミックスは数ミクロンの結晶片がランダムに向いた集合体ですが、強磁場を使うとこの結晶片の向きをコントロールすることができます。Fig.2に強磁場で結晶の向きをコントロールした熱電セラミックスと強磁場を使わずに作製した同じセラミックスの断面組織の電子顕微鏡写真を示しました。明らかに結晶片の向きが「磁場あり」と「磁場なし」で異なっていることがわかります。平板状結晶の平板方向が熱電性能に優れているので、「磁場あり」セラミックスの横方向で熱電性能が増強されていることになります。これを利用すれば、「磁場」という他にない遠隔力で高機能セラミックスの創製が可能となります。

その他、酸化物材料の溶融凝固過程の磁場印加効果や、結晶化学を駆使して、磁場組織制御に必要な磁場(配向磁場)を低減させた物質開発や配向磁場方向の自由な制御も行っており、新しい「磁気科学」分野も切り拓いています。

他の研究テーマも見る:
新物質グループ
ビスマス系グループ
RE123グループ
MgB2グループ
熱電変換材料グループ
Mn酸化物グループ
磁気科学グループ

≫岸尾研究室ホームページに戻る