RE123グループ

RE123(REBa2Cu3Oy, RE : 希土類元素)は1987年に発見された超伝導体で下に示すような結晶構造をしています。 超伝導転移温度(Tc)は90 Kを超え、液体窒素の沸点である77 Kにおいても、他の高温超伝導体に比べ 磁場中での臨界電流密度(Jc)が高いという特長を持ちます。 そのため、電力貯蔵用のフライホイールや水浄化用の磁気分離装置の磁石として、また次世代薄膜線材としての応用が期待されています。

Fig.1 Fig.2 Fig.3
Fig.1 RE123の結晶構造 Fig.2 筋斗雲も浮きます Fig.3 ピラフも吊れます

私たちはこのRE123の特性を向上させ、より多くの実用化ができるように研究を行っています。 実用に向けては磁場中でのJcの上昇が必要となります。そのために溶融凝固バルクと呼ばれる擬似単結晶を作製したり、 ピンニングセンターと呼ばれる磁力線をトラップする部分を導入したりしています。 不純物金属元素が微量に置換した領域は、磁場中で有効なピ二ングセンターとして働くことをこれまでに明らかにしています。 これ以外にも2種類のREを同時に添加した効果や、空気中の二酸化炭素がバルクに及ぼす効果などを調べ、広い視点から特性向上を目指しています。

実用化に向けてのJcの向上のためにはTcを上昇させることも重要です。 Tcはこれまでの研究でRE元素に固有なものと思われており、Tc = 96 K以上のRE123はまだ作られていません。 私たちは溶融凝固バルクに比べ作製が容易であり、焼成雰囲気を変えられる多結晶体を用いて普段変えられていない条件(酸素分圧、温度など)を変えることで Tcの上昇をめざしています。

また私たちは基礎的な物性研究として、自作の単結晶を用いた研究も行っています。 自己フラックス法を用いて様々な組成比の良質な単結晶を育成し、その物性の評価を行っています。 基礎物性を評価することにより、応用の際の物質設計の指針となります。

発見から20年のあいだ、RE123超伝導体のJcは着々と改善し続け、小型の溶融凝固バルクはすでに実用化されています。 ところがより大型のバルクの実用化へはいくつもの壁があり、まだまだ研究することはたくさんあります。 私たちの研究によって、いつかRE超伝導体がもっと身近なものになるように願っています…

REグループ一同

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