Mn酸化物グループ

私たちが研究を行っているペロブスカイトMn酸化物は、RMnO3 (R : 希土類元素またはアルカリ土類金属元素)という組成式で表され、図1に示すような結晶構造を持つ物質です。この物質は温度を下げていくと低温で強磁性に変化するという性質を持ちます。1969年、この物質に外から磁場を印加すると強磁性になる温度(TC)付近で電気抵抗が大きく減少するといった負の磁気抵抗効果(CMR効果)が日本で発見され、全世界で大きな注目を集めました。磁場によって電気抵抗が制御できるということは、スイッチングデバイスや磁気メモリへの応用が可能であることを意味します。パソコンの大容量化が求められている現在において、この物質は磁気エレクトロニクス分野での応用が大きく期待されています。

Fig1 Fig2
Fig. 1. RMnO3の結晶構造 Fig. 2. La0.95Sr0.05MnOy単結晶の
過剰酸素量制御によるTCの変化

私たちの研究室では、精密化学組成制御によってペロブスカイトMn酸化物におけるCMR効果のさらなる増大と低い磁場での高感度化を目指しています。化学組成制御といっても様々な方法があり、希土類元素の一部を別の元素で置き換える方法、温度や雰囲気で試料内部の酸素の量を変える方法、高温で長時間保持することで試料内部の歪みや組成の不均一さを取り除く方法などがあります。さらに、私たちはより本質的な物性を知るためにFloating Zone法で育成した良質な単結晶(試料全体がひとつの結晶であり宝石のようなもの)を用いて研究を行っています。

上では組成式をRMnO3と書きましたが、実際は酸素の数は正確に3と決まっているわけではありません。 これを酸素不定比性と言い、この酸素量は周りの温度や雰囲気(酸素分圧)で大きく変化します。私たちはこの性質に着目し、 定比組成(酸素の数が3)を超えた分の酸素(= 過剰酸素)の量を変化させて、物性にどのような違いが現れるかについて 調べています。これまでに、酸素の量が大きくなるにつれてTCが高温側へ系統的に移動するなどといった 興味深い現象が見られています(図2)。他にも、Rにあたる部分をいくつかの希土類元素で混合することで、 TCをコントロールし、CMR効果の増大を狙う研究も行っています。

ここでは、私たちの研究の一部しか紹介できていませんが、CMR効果の解明と増大を合言葉に、他にも色々な試みをしながら、 これまで不透明で無視されてきた現象や効果の重要性を明らかにしてきました。今後もこのペロブスカイトMn酸化物が 磁気抵抗材料として実用化されるためのハードルをひとつずつクリアしていきたいと考えています。

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