◇強磁場NMRマグネット開発の現状と展望
金材研では第2期超電導マルチコアプロジェクトの一環として、95年から6年計画で1GHz級NMRスペクトロメータの開発研究を推進中である。このプロジェクトの開発責任者である金属材料技術研究所強磁場ステーションユニットリーダー井上廉氏は、この研究の開発状況について、次のように報告した。
マグネットの最内層HTSコイルに関して、5社が試作した小コイルの評価テストを最近行ったところ、1社に仕様を上回る成果が得られた(図1のBi2212)。HTSコイルの電源駆動と大型化を許せば、現在の延長線上で実現可能であるが、永久電流モード運転を行うためには抜本的なHTS技術の進歩が必要である(図2のごとく現線材のn値は極めて低い)。 マグネットの小型化を図るには、中層コイルに用いるNb3Sn線材の高磁場Jcをさらに向上させる必要がある。開発中の急熱・急冷法Nb3Al線材の工業的実用化ができれば、1GHz超電導マグネットの4.2K運転が実現可能となろう。強磁場マグネットの将来展望については、HTSを使わないでNb3Alコイルの1.8K運転により1GHz(23.5T)発生が可能になり、Bi2212の高性能・長尺線材実用化により、1.1GHz(28.8T)あるいは1.2GHz(28.2T )マグネットの実現も夢ではない。
図1 各種Bi系テープの臨界コイル電流密度の磁場依存性
図2 n値の磁場依存性