SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.5, Dec. 1996, Article 15

磁気シールド高温超電導円筒

 磁気シールド型限流器の開発には高温超電導円筒が使用されている。古河電工等で開発された超電導円筒は機械特性の悪い超電導厚膜を銀、マグネシア等の頑丈な基板に焼き付けられた構造をしており、ハンドリングもよく温度衝撃にも強いという。同社では脳磁気計測用の極低磁気ノイズ空間を提供する磁気シールドとしてビスマス系超電導体(Bi2Sr2CaCu2Ox)を銀円筒に焼き付け、人体が入る程度の大型超電導円筒を作製した実績もある。基板円筒に焼き付けられた厚さ0.2〜0.3mmの超電導体の臨界温度は90〜95K、臨界電流密度は1000A/cm2程度である。特に配向はさせておらず、液体窒素温度で100ガウス程度の磁場まで臨界電流密度は低下しない。
 限流器用途では短絡時に銀基板に流れる遮蔽電流が限流器に発生するインピーダンスを低減させ限流特性を損なう恐れがあるため、基板を不導体であり超電導体と熱膨張率も近いマグネシアに転換した。銀基板とマグネシア基板超電導円筒で作製時の超電導特性には大差ないが、温度衝撃に対しては超電導体との熱膨張差の小さいマグネシア基板超電導円筒の方が強くなる。ただし、作製可能な超電導円筒の大きさは入手可能なマグネシア円筒サイズに制限されているとのことである。

( MM )


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