SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.5, Dec. 1996, Article 11

ASC社100大R&D賞 受賞

 最近ASC社は、同社が開発した新製品(高強度HTS線材とCryo Saver 電流リード)が96年度100大R&D賞に選定されたことを明らかにした。 100大R&D賞は、1963年からR&Dマガジンにより設定された賞で、その年に開発された技術的に最も重要な100の新製品に対して与えられる、別名「応用研究分野のノーベル賞」と呼ばれるものである。(我が国では日刊工業新聞社の”10大新製品賞”がこれに相当する)。
  ASCのYurek社長は、今回の受賞について「我々の技術進歩とHTS技術の商用化に向けてのリーダーシップがR&Dマガジンに認められたことは大変嬉しい。新技術の商用化には、通常10〜15年かかるが、我々もちょうどその時期に来ている」と得意気に語った。
 受賞の対象となったCryo Saver 電流リードは、病院のMRI 装置内蔵の超電導マグネット(-269℃)へ、室温の電源から電流を供給するHTS線を用いたリードである。従来の銅リードでは、リードの発熱による無駄な熱が極低温部へ流入するのに対して、HTS リードでは発熱なしに大電流を流せるので、小型化と同時に冷凍コストを低減できる。用途は、MRI だけでなく、SMES、磁気分離装置、粒子加速器などに使われる。
 高強度HTS線は、最近Pirelli 社が試作したプロトタイプ電力ケーブルにも使用されている。Pirelli社副社長のM. Rahman 氏は「HTS 線を用いた商用電力ケーブルは、従来のケーブルの少なくとも2 倍の電力を送電できるだろう。サイズはより小型化でき、同時に省エネルギーかつ低コストである。最近、我々は50m 長HTSケーブルの3,300A通電実験に成功した。ただちに100〜200m長へスケールアップするのになんの障害もないと思う」とコメントしている。
 さらにYurek社長は「今回の成果はHTS 技術を商用化し、世界がエネルギーを制御する方法を革新する過程における第一歩である。今後4年位のあいだに、一連のHTS線と超伝導コイルを製品化して、電力分野(ケーブル、モーター、改質機器)へ供給していきたい。HTS技術に基づく電気機器は、規制緩和など変化しつつある環境下で、指導的電力会社に競争上有利な手段を提供するものと考える」と補足している。

(相模)


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