SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.5, Dec. 1996, Article 8

科技庁・第2期超伝導材料マルチコアプロジェクト/磁気クロマト法の提案 〜 金材技研

 金材技研は、電総研その他との共同で、新しい磁気分離応用技術である磁気クロマトグラフィー法を提案し、計算機シミュレーションと基礎実験を行っている。これは科技庁の第2期超伝導材料マルチコアプロジェクトで推進中のテーマの一つであり、二次廃棄物を伴わない新しい微粒子分析法である。最近、中間成果(参考文献1),2))を発表した。
 従来の高勾配磁気分離法(上記 Selvaggi 氏らの方式も含まれる)は、スラリー中の微粒子を磁気力によって磁気マトリックス(通常数百ミクロンの強磁性メッシュ)に吸着させる方式である。金材技研で提案し、原理実証試験をしているのは、従来方式では分離不可能な弱い磁性の微細粒子を分離できる磁気クロマト法である。この方式では、高勾配磁界中を流れる流体中の微粒子は、その磁性や粒子径の違いによって流れるスピードに差ができることを利用している。流体の粘性力をも利用するので、従来の磁気分離方式の分離限界を越える分離ができる。
 この方式では、イオン交換樹脂などに相当する固定相を用いないため、取り扱いが簡単で、かつ、先端産業や原子力産業から排出される有用あるいは有害物質の分離・濃縮の際の二次廃棄物の低減にも大きく貢献するものと期待される。
■ 参考文献:1) T. Ohara et al;"Feasibility of Magnetic Chromatography for Ultra-Fine Particle Separation", 電気学会論文誌B, vol.116-B, no.8, pp.979-986 (1996)、
2) "磁気クロマトグラフィーの可能性を解析−超伝導磁石と強磁性細線による強い磁気力で懸濁微粒子を分離," 金材技研ニュース, no.5 (1996)

(白雲)


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