SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.4, Oct. 1996, Article 10

同和鉱業 Y, NdのMOCVD用液体原料を開発

 同和鉱業はこのほど、Y, NdのMOCVD用液体原料を開発し、サンプル供給を開始した。このMOCVD原料は、TMOD( 2, 2, 6, 6 - テトラメチル - 3, 5 - オクタジオン)を配位子とする金属錯体で融点がY媒体(図1)で約95℃、Nd錯体(図 2)で約135℃であるため、液体状態で使用することが容易になった。
 MOCVD法による超電導体薄膜の作製には、現在、原料物質にDPM錯体が用いられているが、融点がYでは 175℃、Ba約217℃、Cu約199℃、Nd 約218℃などのように200℃前後あるため、装置の耐熱性などの問題により、固体状態からの昇華によって原料蒸気を発生させている。しかし、固体からの昇華では気化速度が原料の表面積に依存するために、原料の減少に伴って気化速度が減少し安定した成膜速度が得にくいことから、膜の組成制御が難しい。そのため原料蒸気が安定して得られる液体原料を望む声が多かった。
 同和鉱業では、平成3年にDPMと同じβージケトンであるTMHPD(2、2、6ートリメチルー3、5-ヘブタンジオン)を配位子とする融点約118℃のCu 錯体を液体状態で使用できるMOCVD原料として開発しているが、TMOD錯体も同じβージケトン系の錯体で、空気中での取り扱いが容易であること、フッ素を分子中に含まないことなどのDPM錯体の長所はすべて同様に持ち合わせている。  今回の開発はY系、 Nd系超電導体薄膜作製プロセスに大きな変革をもたらし、超電導体薄膜の応用開発にも貢献するものと思われる。
同和鉱業超電導開発センターの田崎雄三氏は「TMOD錯体の合成は、これまで手がけてきたTMHPD錯体やDMHPD錯体と違い、配位子の合成検討にかなりの時間を費やした。
 当初は極めて収率が低く、特性が良くても実用的なコストでの合成ができず、苦労した。今後は最大の問題であるアルカリ土類金属の新規原料の開発に集中する」とコメントしている。
 問い合わせ先: 同和鉱業(株)事業開発本部超電導開発センター 担当:吉田、石合、和田 電話:03-3201-1076 ファックス:03-3201-7945

図1

図2

(鳥瞰)


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