SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.3, July 1996, Article 14

QUANTUM DESIGN社 〜 高感度輸送現象測定用新型物性測定システム(PPMS)・オプションを開発

 1996年5月8日SAN DIEGOにおいて、Quantum Design(QD)社は物性測定システム(Physical Property Measurement System: PPMS)の最新オプションを発表した。新型ACトランスポート(ACT)は、AC抵抗率、4端子又は5端子法でのAC Hall効果、I-V特性、臨界電流の自動測定が可能である。試料回転器と組み合わせると、上記のトランスポート測定は印加磁場に対して様々な角度で行うことができる。 
ACTは、高感度抵抗率測定及びデジタル信号処理(DSP)回路により、2Aまでの低出力I-V特性や臨界電流の全自動測定が可能である。QD社のKurt Jensen技術者によると、「臨界電流について、電流のランプ・レートは(Fast、Medium, Slowの)3種類から選ぶことができる。バルク・ワイヤーの試料とは異なる電力散逸特性を持つ薄膜試料にも対応できる様に、瞬時の応答から長い積算時間での応答までをユーザーが選択でき、標準的な電圧計/電流源の組み合わせを卓越している。」
 ACTによる幾つかの測定結果を以下に示す。図1は、(Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu3Ox銀シーステープの様々な電流値での超伝導転移に伴う抵抗の変化である。電流が高いほど転移幅が大きくなっている。超伝導テープは、銀シースにより分路ができるため、常伝導状態での抵抗率が非常に小さくなる。このような測定を精密に行うのにACTオプションの高感度性が重要になる。図2は、YBa2Cu3O7-d単結晶の5端子法でのHall効果の測定である。ACTでの5端子配列と磁場・電流自動制御の組み合わせで、Hall電圧を抵抗による電圧や熱起電力から分離できる。
 QD社のJerry Daviess氏は「我が社は、最初のMPMS SQUID磁束計と共に常に高性能磁気特性測定装置を供給してきた。しかし、PPMSの目的は様々な高性能測定装置の供給であるので、高性能抵抗測定用オプションの供給は当然である。試料回転台を用いたACTとACMS磁化及び帯磁率オプションとの組み合わせで、PPMSユーザーは試料の様々な電磁特性を自動制御された温度・磁場下で簡単に測定できる」と述べている。PPMSの温度、磁場の範囲はそれぞれ1.9 〜350 K、0〜7又は9 Tである。この製品に関する情報は、Quantum Design社又はIndeco社まで。Quantum Design社のwebページは、 http://www.QuanDsn.com/

図1: (BiPb)2Sr2Ca2Cu3Ox銀シーステープの様々な印加電流での抵抗の 温度依存性。

図2: YBa2Cu3O7-dの87 KにおけるHall効果の磁場依存性。用いたAC電流は10 mAデータは4 mAで矢印間の全領域の面積はわずか28 nV。磁場反転と5端子法を組み合わせて得られた。

(猿岩石)


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