SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.3, July 1996, Article 11

高温超伝導フィルターシステム実地試験に成功 〜 米国ISC社・南西ベル移動システムズ社

 米国のSouthwestern Bell Mobile Systems 社は Illinois Superconductor Technology社より提供をうけていた高温超伝導マイクロ波フィルターシステム(冷凍機一体型・商標名SpectrumMaster)を、テキサス州ダラス市での地上基地局で実際の時分割マルチアクセス・ディジタルネットワーク系統に組み込んでの試験を行ってきたが、6月13日、初期の試験結果は満足すべきものであることを明らかにし、さらに他の3都市においても A バンド、Bバンドの両方で実地試験を拡大すると発表した。実際に高温超伝導フィルターシステムを用いることにより、回線の不通回数を減らすとともに通話の品質を高めることと、ディジタルネットワークの回線容量を拡大することに成功した。高温超伝導フィルターの地上基地局における実地試験としては世界初の成功であり、IST社の同分野でのリードを印象づけるものである。
 一方、コンダクタス社も6月19日、ウィスコンシン州の携帯電話会社であるCellcom社からの注文により、この秋までに3台の受信用フィルターシステムを納入し、結果がよければそのまま設置されて、販売される契約が成立したと発表した。両社はすでに今春に低電力携帯電話(0.6W)の遠隔地利用を目指した試験を行ってきており、ノイズレベルが2〜4dBも向上することを結果として得ている。両社は「既に建設を終った地上局において受信障害がある場合にも、高温超伝導フィルターユニットに交換しさえすれば問題解決が図れるのでもっとも安上がりな方法だ」としている。
 これらの成功により、少なくとも受信用フィルターに関しては、高温超伝導フィルターは完全に実用レベルに到達したことが示され、今後地上局の増設が続く米国を始め、世界各地での導入が検討されると予想される。

(JJY)


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