SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.3, July 1996, Article 2

ヘリウムレス磁石 10T 回転式金材研に納入〜大口径型:神鋼グル−プ

 神戸製鋼所とジャパンマグネットテクノロジ−社は高温超電導パワ−リ−ドと小型冷凍機を用いたNb3Sn-NbTi コイル磁石(室温ボア径 101 mm、中心磁場10T)を金属材料技術研究所強磁場ステーションの磁気化学グル−プにこの5月納入した。
 この磁石には二つの新たな特長があるという。まず第一は非常にコンパクトな設計がなされており、回転機構を使って磁場発生方向を水平にも垂直にもできる点。第二に新たに開発されたネオンガス式の熱スイッチ(特許出願中)の搭載により、室温から4Kまでわずか45 時間で到達できる点にあるとされる。回転できることで、種々の用途に便利に対応できるとしている。納入を受けた金材研磁気化学グル−プはこれを用いてスピン化学などの分野で強磁場の効果を研究する予定だ。化学反応追跡を行なう際にはレ−ザ−光などを使う必要があり、水平利用の方が使いやすいが、液体を容器に入れて使う場合には垂直利用が便利といったことがあるため回転方式がとられた。最近は住友重機、東芝などのヘリウムレス磁石市場化先行グル−プも回転式を採用し始めており、回転式がこの種の磁石の標準型になる傾向を見せ始めている。
 同社関連者によれば、同社グル−プが得意としている NMR 分野はもとより、これまで強磁場利用になじみのなかった研究機関、業種への積極的な紹介を行なっていく予定だという。 本磁石は消費電力約 6kW の冷凍機 1 台を用いており、回転のための機械強度を確保するための熱設計に工夫が凝らされているという。マグネット本体は約 80 kg と軽量。測定関連系を含めての公表されている売り値は 3970 万円。写真は本マグネットをそれぞれ、縦型、横型に使用する時のもの。 写真に見える穴が室温ボア。クライオスタット直径は75 cm、長さ67 cm。冷凍機が直結されており、この他に圧縮機と磁石電源が必要。
 すでに国内では10T級冷凍機直結型磁石の一部は 2000 万円程度で市販が始まっており、価格的にも液体ヘリウムを用いた磁石に比べて十分対抗できるレベルにこの種磁石が到達し始めているように思われる。
 なお、詳細は 5月20日より北九州市で行なわれた第16回国際低温会議(ICEC)で発表された。
問い合わせ先はジャパンマグネットテクノロジー(株)東京営業部
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TEL:03-5634-4085, FAX: 03-5634-4086

写真1

写真2

(KS-KK)


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