SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.2, May 1996, Article 2

世界最長(50m )高温超電導ケーブル導体通電試験に成功 〜 ピレリ社、EPRI、ASC、 DOE共同チーム

 ヒューストンで開催された高温超電導10周年ワークショップの初日の3月12日、PIRELLI社(本社イタリアの多国籍ケーブルメーカー)、EPRI(米国電力研究所)、American Superconductor Co., は米国エネルギー省(DOE)のSuperconductivity Partnership Inisiative( SPI )プロジェクト成果の一環として、50m長ケーブルの試作開発成功を報じる記者会見を行なった。
 発表によれば、ASC社がこれまでに提供した6,000mのBi2223銀シース多芯テープ提供をうけて、PIRELLI社のケーブル製造ラインの装置を用いて50m長の多層テープ導体を試作、dc 通電試験で、1,800Aの通電に成功した(1μV/cm規準)。この値はIc・Lで90,000A・mとなり東京電力・住友電工のグループが3芯ケーブルで達成した92,400A ・mに次ぐ規模となっている。
 共同チームはこの成功を受けて、1998年までに実際の地下埋設ケーブルにより近い形での30m長のケーブルを開発し、フィールドテストをEPRIにて行なう予定。この後、SPIプロジェクトのphase IIに移る予定である。今回の記者発表はEPRIの担当官であるPaul Grant氏が司会を行ない、PIRELLI North America副社長Kurt Yeager 氏が発表を行ない、それをASC社技師長のAlex Molozemoff氏やDOE担当官が補足する形で大掛かりな発表となっており、同チームの意気込みを示すものであった。
 記者らの質問に答える形で「とりあえずの市場としては、全米各地に広がる6000マイルに及ぶ地下埋設ケーブルの代替市場がある」「米国では現在架空電力ケーブルに対する住民の反対運動が強く、これを解決するための方策としての技術的方向を示すもの」といったコメントがあった。
 電力ケーブル用の開発は、すでに東京電力と住友電工、あるいは東京電力と古河電工などの共同チームが7m長の室温ターミナルを敷設したシステムの開発を発表しているが、今回の発表はこれに対して長さの点で特長をもつもの。ケーブル構造としては、中芯のコア内に加圧液体窒素を通じて冷却し、パイプに導体が巻かれるタイプのもので、交流ロス低減のために往復巻線やシールドの工夫がなされている上記東電などのケーブルに比較するとまだ初歩的な構造であるとみられる。
  PIRELLI社のChief Executive OfficerであるGiuseppe Morchino氏は「我々はSPIプロジェクトのphase Iの最初の目標を期限前に達成した。我々は1998年に設定された世界最初の高温超伝導電力ケーブルのプロトタイプのの試験に向けて、ケーブル製造と付帯設備及び設置をこれから行なう。電力配電ケーブルの世界市場を PIRELLI社はリードしていくつもりである」と述べている。
  PIRELLI社は伊、米、仏、英、ブラジルに研究開発センターを持ち、従業員15,000人、年商約4000億円の電力ケーブル最大手の一つである。

(SSC-KS)


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