SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.1, Feb. 1996, Article 14

新技術事業団が磁気科学プロジェクトを発足 〜 高温超電導磁石を用いて

新技術事業団は3年前より未開拓分野として化学や生物、金属プロセスなど従来は磁場と関連の薄かった領域での磁気効果の研究結果を検討するワークショップを行ってきたが、磁性材料以外の物質も含め、磁気効果を探索するプロジェクト「各種反応・プロセスにおける磁気効果に関する研究」を5年計画で発足させた。このプロジェクトでは高温超電導材料を用いた超電導磁石が使用され、非磁性物質とそのプロセスに対しての磁気効果探索及び応用が、埼玉県鋳物機械工業試験場に新設される拠点研究室、金属材料技術研究所、約10の協力大学、参加企業によって実施される。予算総額は5年間で約5億円で、それに加えてスタートアップ資金としての平成7年度補正予算約5億円がプラスされた。
 これにより新技団では埼玉県鋳物機械工業試験所、金属材料技術研究所、参加企業、大学などにより、磁気浮揚鋳造設備の開発と鋳造プロセスへの磁気効果の検討を行う。また、平成8年のうちに室温空間に磁場をかけることのできる冷凍機冷却型超電導磁石の開発を委託し、拠点や大学などでの磁気効果探索研究を可能にする。これらの超電導磁石はいずれも高温超電導パワーリードを用い、液体ヘリウム不要のもので、ヘリウム設備のない拠点や大学でも使用できるもの。また、そのうちの1台は磁石そのものも高温超電導線材コイルを用いるもので、8テスラ以上の高性能のものが本年度内完成の予定である。
 本プロジェクトの磁気効果探索は、これまでのワークショップにおいて、再現性の確認できる磁気効果として、水や有機液体の表面・界面の変形、触媒上へのガス吸着、腐食や電析などの電気化学プロセス一般、バクテリアの繁殖速度、高分子の架橋反応、結晶成長形態、燃焼、空気の対流など多岐にわたる効果を挙げている。それらの研究をさらに展開し、また、光合成や生体反応などを含めた広い分野での磁気効果発見を狙ったもの。探索研究は能力開発大学校青柿良一教授をリーダーとし、ポスドク、学生を加えた拠点研究室と約10箇所の参加大学で行われる。
 探索研究は高温超電導材料技術の進展により、磁場の利用が容易となり、専門研究者に限られていた高磁場の利用が一般の研究者に開放されつつあることから、それを先導する形で行われる。

(Blue Sherbet)


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