SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.1, Feb. 1996, Article 6

トロイダル型超電導電力貯蔵装置(SMES)で電力系統安定化試験に成功

 関西電力(株)は、三菱電機(株)、三菱重工業(株)、住友電気工業(株)、大阪大学と共同で、電力系統の安定化を主目的としたトロイダル型SMESの研究に取り組んできたが、1994年に1台400kJのコイル3台を組み合わせた小型トロイダル型SMESを試作し、現在同社総合技術研究所構内で系統実験を実施中である。
 このSMESシステムは3台の超電導コイルを電圧型変換器とチョッパを介して、実際の電力系統に接続するようになっている。コイルはパルス的なエネルギーの出し入れを行うため、変動磁界により発生するロスの低減とクエンチの発生を押さえることを考慮した設計となっている。コイルはNbTi製2台とNb3Sn製1台であり、いずれも液体ヘリウム浸漬冷却である。定格仕様は350A、400Vで最大磁界は約5テスラである。
コイルの製作は3社が1台ずつ行い、それぞれに特色を持たせている。三菱電機はNb3Sn導体を用い温度マージンによる安定化を図っている。三菱重工は、高速の電流変化が可能なコイルを作り、クライオスタットは渦電流による損失のないGFRP を用いている。住友電工は低交流損失導体の使用とビスマス系高温超電導材の電流リード使用により液体ヘリウムの消費量の低減を図っている。
これまでに同社らは、1)超電導コイルに定格値までの直流通電、パルス通電を行ったコイルの安定性確認、2)電磁力に対するコイル支持の妥当性、3)損失測定、4)コイル3台への入出力制御、5)1台のコイルが故障した場合を想定して、そのコイルのエネルギーを他の2台のコイルに転送させる制御などの試験を行ってきている。
 これらの試験でSMES本体の特性を確認し、現在は500kV 、2回線を模擬した送電系統にSMESと50kVAの発電機を接続して、送電系統の事故時に発生する発電機の動揺をSMESがどの程度抑えるかの検証試験を実施している。関西電力はこれらの試験でSMESの大きな効果を確認したと発表しており、今後も引き続き電力動揺、電圧変動、周波数変動の安定化試験を行いSMESの効果を検証していく予定である。

左:SMESの外観

(TK)


[ 前の号へ| 前の記事へ| 目次へ| 次の記事へ| 次の号へ]