SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.6, Dec. 1995, Article 18

冷凍機直冷式強磁場・大口径超伝導マグネット 全国共同利用へ

 本誌でもしばしば紹介してきたビスマス系酸化物超伝導体を電流リードに用いた冷凍機直冷式のマグネットは、既にいくつかの研究所・大学などに納入され、研究の現場で使用されはじめている。これらのマグネットは、強磁場を用いる実験に従来必須であった液体ヘリウムを必要せず、利用者達の負担を軽減した事で、大変評判がよい。しかしながら、まだまだ需要が少ないせいもあってその価格は依然として高く、広く一般の研究者に普及させ、その恩恵に多くの人々が浴するというのは困難な状況である。
このたび、東北大学金属材料研究所(以下、金研)の渡辺和雄助教授と住友重機械工業の共同で開発された世界最高水準の冷凍機直冷式マグネットが、金研に設置され全国共同利用施設となった。マグネットは 2 つで、一方は52mmの縦型室温ボア空間に最大10.7T(定常で10.5T)の強磁場を発生することができ、もう一方は220mmの大きな室温縦型ボアを持ち、最高5.5Tの磁場を発生する大口径マグネットである。渡辺助教授によると、両者はそれぞれ、冷凍機直冷式マグネットとしては世界最強磁場および世界最大口径であるという。
金研の付属強磁場超伝導材料研究センターは、数多くの強磁場マグネットを有し、これまでにも共同利用施設としての長い歴史を持ち、多くの研究者に利用されている。そのラインナップに冷凍機直冷式のマグネットが加わることは、これまで関心を持ってはいるものの、冷凍機直冷式マグネットを使用することのできなかった多くの研究者達が実際にそれらに触れ、その特徴を知ることができる機会を与えることになる。うまくゆけばそれが、冷凍機直冷式マグネットの需要の増大に寄与し、価格の低下を引き起こし、更なる普及が期待できるだろう。スーパーコム読者の皆さんでも関心のある方はぜひ、この機会に利用してみてほしい。それによって、超伝導マグネットの開発も促進され、また、磁場下での物性研究にも弾みが付くことが期待できるのだから。

東北大学金属材料研究所附属強磁場超伝導材料研究センター:022-215-2147      住友重機械工業株式会社広報グループ:03-5488-8219

(MOSES)


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