SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.6, Dec. 1995, Article 10

コンダクタス社〜95年政府コントラクト総額13億円

 米国カリフォルニア州 SunnyVale にある高温超電導エレクトロニクスベンチャーである Conductus Inc. はこのほど、その政府関係から95年度内に得た研究資金が様々な機関より14件、総額13億円に達することを公表した。これは同社の総所得の9割に達するもので、同社が実質的に国立研究所としての高温超電導開発部門を担っていると解釈できるものである。同社はすでに SQUID 関連商品を市場化し、さらに、移動体通信用のフィルターを中心とするシステム(本誌既報)、NMR 関連製品(既報)への進出を企図しているように思われる。 今後、同社が数年以内にこの比率をはぼゼロにもっていけるかで、同社の未来が決定されると見ることができよう。
 このようなやりかたは高温超電導電力応用を目指すボストン近郊のWestboroughにあるベンチャー American Superconductor Co.(ASC)も似た状況にあると思われる。ただし、ASC社の方が,他の研究機関や企業に試験用の製品、マグネットやコイルなどを納入する形になっている場合が多いように見受けられる点が異なっている。
 我が国は新技術に対するベンチャーの起業は高温超電導においても非常に低調な状態にあり、政府開発費のほとんどは国研と民間大会社に流れる。このために、マーケットが年間10億円未満と予想される製品の市場化は米国に比べて非常に低調になっていることが一般的に認められる。
 ASC 社の場合には MIT の教授らが、Conductus 社の場合にはスタンフォードの教授らが中心となってその設立に動いたが、我が国ではこのような動きも非常に低調である。国立大学の場合には国家公務員法などが足枷となっている面もあるが、それ以前に、研究開発ベンチャーの設立に対する社会的風土の欠如が考えられねばならないであろう。

(PKO)


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