SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.6, Dec. 1995, Article 5

銀シースビスマス系の大電流線材、高強度線材 著しく進展 〜 住友電工

 住友電工大阪研究所は、大型超電導マグネットに必要とされる大電流線材と高強度線材の開発について、最近の進展状況を10月24、25日に金属材料技術研究所において開催された第7会日米高温超電導ワークショップ、10月30日〜11月2日に浜松で開催されたISS'95、11月3〜5日に秋田大学で開催された低温工学・超電導学会において相次いで発表した。
 高温超電導線を用いた大型超電導マグネットは、その保護や大きな電磁力に対する対策が必要とされるが、 今回の同社の発表によると、大電流線材としては、液体窒素温度では、外部磁場無しの場合、320〜377Aの臨界電流が可能で、液体窒素温度下、1テスラでも100A近い臨界電流が可能である。これらの線材は従来の銀シースビスマス系線材の改良されたものであり、液体ヘリウム温度では、外部磁場無しで、2000Aを超える臨界電流が15テスラでは1400A という大電流の臨界電流を記録している。
 また、高強度線材としては、被覆に用いる銀に添加元素としてマンガン、アンチモンなどを加え、これらの元素の微細な酸化物をマトリックスの銀に分散させ、機械的強度を改善したもの。すでに曲げ特性は多芯化により改善できることはよく知られているがさらにこれに加え、多芯線材において臨界電流が劣化する引張応力を従来の5kg/mm2から4倍の20kg/mm2まで向上させることが可能となり、大型マグネットのフープストレスのレベルの引張応力に耐える線材ができたという結果である。従来、強度改善には銀への添加元素としてマグネシウムやニッケルなどが試され、加工性や、臨界電流の低下が懸念されていたが同社の発表によると、臨界電流の低下もなく、強度改善が可能という。
 このような大電流が一本の線材で可能となり、強度もNb3Snなど化合物系超電導線並みとなっったことで、大型の超電導マグネットに必要とされる保護や、耐電磁力特性が確保できる見込が得られ、高温超電導線を用いた大型マグネットの開発が着実に進むものと期待される。

(ハナマルキ)


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