SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.5, Oct. 1995, Article 5

米国でYBCOバルクマグネットによる磁気浮上車両走行試験計画

 1995年8月29日付SUPERCONDUCTOR WEEKによると、American Maglev Technology, Inc. (AMTI )は、Institute for Beam Particle Dynamics (IBPD) of University of HoustonのDr. Roy Weinsteinのグループ、およびUniversity of Texas Center for Electromechanics (UT-CEM) のRay Zowarka のグループと協力して、将来の超高速マグレブ(磁気浮上鉄道)設計およびそのプロトタイプ車両へのYBCOバルクマグネットの適用可能性の検討を行っている。AMTI はすでにFlorida のEdgewaterに、全長2マイル(約3.2km)でアルミニウムコイルが配置された試験線の建設を開始しており、10月には完成の見込みである。完成後は、NdFeB永久磁石を載せた車両を使って、時速120マイル(約190km/h)までの走行試験が行われる予定である。AMTI はすでに全長350フィート(約100m)の実験線で、3400ポンド(約1500kg)の車両を使って、時速50マイル(約80km/h)までの試験走行を実施している。彼らは、車載マグネットとして高温超電導バルクマグネットを使用するという提案が受け入れられれば、layered arrays of YBCO pelletsから成るマグネットを製作する予定である。YBCOのピン止め力とflux creep特性は着実に改善されており、クエンチを効果的に回避する手段が得られれば、永久磁石をYBCOマグネットに置き換えることができると彼らは考えている。それによって、マグネット総数と全体のエネルギー損失を減少させることが可能となる。低温になると共に比熱や熱伝導度は小さくなるため、giant flux jumpがより多く観測されるようになる。従って、低温(例えば7K)で使用するよりも65K程度でYBCOを使用した方がクエンチに対して安全であり、その場合クエンチの問題はほとんどないと考えている。
 高温超電導バルク材を使用した超電導磁気浮上はいろいろと提案され、小規模な実験が行われてきているが、このように3.2kmという長い試験線で、1500kgという重量の車両を使用しての走行試験まで考えた大規模で具体的な計画は初めてであると思われる。日本国内においてもEDS(Electrodynamic suspension)方式の超電導磁気浮上車両の超電導マグネットを高温超電導バルクマグネットで置き換えることの可能性が検討されているが、現在は具体的な実験とは結びついていない。この計画に対し、超電導磁気浮上の研究に携わっている東京大学の大崎博之助教授は、「浮上方式自体は従来のEDS方式であるようだが、高温超電導バルクマグネットの適用は大変興味深く、今後の成りゆきに注目したい。具体的なマグネットや地上コイルの配置、バルクの励磁方法など不明な点がいろいろとあるので今後の発表などに気をつけたい。特にバルクをどのように層状あるいはタイル状に配置してマグネットを構成し、その励磁をどのようにしているのかは、システムの面からも興味がある。米国では磁気浮上鉄道の研究開発は現在再び厳しい状況にあるようなので、それに抗してこの計画が順調に推移し、YBCOマグネットが導入されて、走行試験が重ねられていくことを願っている」というコメントを寄せている。

(SCLD)


[ 前の号へ| 前の記事へ| 目次へ| 次の記事へ| 次の号へ]