SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.4, Aug. 1995, Article 11

月面天体望遠鏡用浮上制御システムの開発

 ヒューストン大のW.K.Chu教授らは、NASA と共同で、月面上に設置する天体望遠鏡用の超電導浮上制御システムの開発に成功したと、ハワイのマウイ島で開催されたMRSとISTECが主催する超電導ワークショップにおいて発表した。
 月面天体望遠鏡はNASAのChen博士らが提唱しているもので、月面では、大気もなく、夜が長いため天体観測には絶好の場所と指摘している。しかし、月面はダストで覆われており、精密な機器での制御が難しいが、超電導の浮上を利用すれば天体望遠鏡を浮上させて、観測方向を制御できる。また、月の極のクレーターでは太陽光がさえぎられているので、温度が高温超電導体が使用可能な40K程度と考えられること、また、引力が地球の1/7であるので、地球より7倍重いものが浮上できることも大きなメリットと考えている。本システムの開発に対しワークショップより「優秀性能賞」が与えられた。
 Chu教授らは、ハイブリッドベアリングと呼ばれる磁石の反発あるいは吸引力をメインとし、超電導体はその浮上を安定化するのに利用したタイプの装置で、天体望遠鏡の浮上制御システムを設計し、作製している。Chu教授は「月にミッションを送ることができれば、現有のシステムで月面天体望遠鏡はすぐにも設置できる」と語っている。

(芝浦日日通信)


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