SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.4, Aug. 1995, Article 10

超電導バルクマグネットで3.1T(77K)の磁場捕捉に成功〜ヒューストン大

 ヒューストン大IBDP(Institute for Beam Particle Dynamics)のRoy Weinstein 教授らは、ハワイのマウイ島で開催されたMRS とISTEC が主催する超電導ワークショップにおいて、世界最高の捕捉磁場を記録したと報告した。
 用いた試料は、Pt を添加したY1.7Ba2Cu3Oyで、Sm123結晶を種としてトップシード法により作製した直径2cm 厚さ0.8cmのペレットである。この試料に200MeVのプロトンを照射した後、13Tの磁場中で磁場中冷却し、外部磁場を取り除いた後の捕捉磁場は76.5Kで2.6T、59Kで7.4T、54Kで8.34Tを記録している。
 本研究にはワークショップより「優秀性能賞」が授与された。また、会議中に行なわれたフロリダの国立強磁場研究所での励磁実験では44Kで10.1Tの磁場捕捉に成功し「世界で最も強い永久磁石」であると主張している。
 さらに同グループは、U235の核分裂を利用して、同様の試料内に20μm長さの円筒状欠陥を等方的に分散させることに成功し、77Kで3.1Tの捕捉磁場を達成したと報告している。Weinstein教授は「円筒状欠陥は方向がランダムであっても非常に有効であることがわかった。従来の磁束と円筒状欠陥が平行の場合が、ピンとして最適であるという単純な考えは修正する必要があるかもしれない」と語っている。また、本成果はフロリダ州のマグレブ計画を推進するグループから、熱い目で見られているとの伝聞もある。

(田町発MM 電)


[ 前の号へ| 前の記事へ| 目次へ| 次の記事へ| 次の号へ]