SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.4, Aug. 1995, Article 7

高温超電導/絶縁膜積層化でグラジオメータ作製〜英国 DRA

 英国DRA (Defense Research Agnecy) の N.G.Chew氏らは、Mauiで開催された1995 International Workshop on Superconductivityにおいて、YBaCuO 膜とPrBaCuO 膜を層間絶縁膜として用いた積層化技術について発表し、その応用例として積層型のGradiometric SQUIDとFlux Transformerを作製し、Flip-chip方式のGradiometerを開発した。
 YBaCuO膜およびPrBaCuO膜は、ECRを用いた原子状酸素(50%)雰囲気中において電子銃による共蒸着法で作製した。基板はMgOであり、膜はc軸配向している。超電導YBaCuO膜とPrBaCuO層間絶縁膜を多層に積層する際、その表面平坦性が重要であり、各蒸着レートを精密に(ア0.5%)調整した。Cuの析出物やY2O3粒子の出現を押さえるため、Y:Ba:Cu=1:2:3の組成よりY-rich(10%)で薄膜を作製している。微細加工は通常のフォトリソグラフィ技術とArプラズマによるイオンミーリングで行った。エッチング精度を上げるため、エンドポイント検出にはSIMSを用いている。また、crossoverやvia における段差を防ぐため、エッチバックによる平坦化を行っている。
 これらの積層技術を用いて、Gradiometric SQUIDとFlux Transformerを作製した。SQUIDのジョセフソン接合は、PrBaCuO層間絶縁膜のviaを利用したc 軸配向マイクロブリッジである(図(b))。対称形のwasherはcrossoverを用いて配置され、接合に接続されている。一方、10mmピッチで20 turnのinput coil(図(a))と1 turnのpickup loopをもつGradiometric Flux Transformerも、PrBaCuO層間絶縁膜を用いたcrossoverで形成した。発表されたGradiometerは、これらGradiometric SQUIDとFlux Transformer とをFlip-chip方式で構成されている。残念ながら、このGradiometer の性能については発表がなかった。電総研の赤穗博司氏は「今回、発表された超電導膜/絶縁膜の積層技術は、SQUID応用のみならず、高温超電導デジタル応用やアナログ応用にとっても不可欠な技術であり、今後の進展が注目される」とコメントしている。

図(a) Gradiometricflux transformer

図(b) >Gradiometric SQUID.

(Tigers)


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