SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.3, June 1995, Article 13
Bi系で磁束系の一次の相転移観測さる
酸化物超伝導体においてはその高い臨界温度Tc 、短いコヒーレンス長ξ、そして層状構造のために熱ゆらぎの影響が顕著であり 、Tc より充分低い温度で磁束格子の融解が起こりうると言われており、その相転移がはたして一次なのか、二次なのかといったところが注目の的となっている。また、層状構造に由来して、高温では層間のコヒーレンスが失われるために磁束線がパンケーキ状になるというdecoupling 転移が存在するともいわれている。実験的にはYBCOの磁場中での抵抗転移の測定(例えば Safar et al., Phys. Rev. Lett. 69 (1992) 824 )において抵抗の飛びが観測されており、これを磁束格子融解による一次転移とする解釈が提案されている。一方、Bi 系についてはH. Pastoriza ら(Phys. Rev. Lett. 72 (1994) 2951 )が磁化測定において、一次転移に由来すると考えられる磁化の飛びを観測しているが、分解能が十分ではなく、また、転移も非常にブロードであった。
最近、 Weizmann Institute のE. Zeldov らは、Bi2212 単結晶についてマイクロホールプローブを用いて詳細な磁化測定を行った結果、磁束密度Bの温度・磁場依存性において、磁束系の一次の転移が起きたことを示す、不連続な " とび " があることを見いだした( Fig. 1, 2 )。この転移が磁束格子の融解をみているものとすると、転移点よりも高温・高磁場側のBの値が大きいことから、磁束系においては、水同様" 液体 " 状態のほうが " 固体 " 状態より密度が大きいといえる。
Fig. 3 に転移点の温度依存を示すが、この相転移は T= 37.8 K以下、B= 380G 以上の温度・磁場範囲内では観測されなかった。この転移に特徴的なのは、Fig. 4 に示すように、 " とび " の大きさ、ΔB、がこの critical point を境に急激に消失していることである。観測されたΔBの値(〜0.3G)は磁束融解が起きたとした場合の予想値(〜0.2G)とほぼあっている。この転移に関してもう一つ、磁束線の decoupling のそれぞれの場合についての理論式に基づいてフィッティング結果を示してあるが、
いずれの場合も低温あるいは高温側ではずれており、今後さらなる理論の展開が望まれる。
なお、詳しい内容については近々 Nature 誌上に掲載される予定であるのでそちらを参照されたい。
( " Thermodynamic Observation of First-Order Vortex-Lattice Melting Transition in Bi2Sr2CaCu2O8", E. Zeldov, D. Majer, M. Konczykowski, V.M.Geshkenbein, V. M. Vinokur, and H. Shtrikman )
Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4
(ぽんちゃん)
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