SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.3, June 1995, Article 11

地震予知研究情報

 阪神大震災により、今も500か所以上の体育館などで、3万5千人以上が避難生活を強いられ、神戸では傾いたビルが取り残されたままとなっている。活断層地図が飛ぶように売れたそうであるが、その活断層が明日動くのか、1万年先に動くのか、そこが問題である。
 地震大国の日本では、古来からナマズが地震予知に活躍している。確かに阪神大震災前にも、動物の異常な行動があったらしい。昨年6月に日本学術会議地震学研究連絡委員会が地震予知研究シンポジウムを開催したが、 地震のメカニズムは解明されつつあるものの、地震予知については議論の分かれるところである。 こんな中、注目されているのが、ギリシャ・アテネ大学バロツォス教授らのチームが実施している地電流による予知方法である。大地震の数日前から地電流の異常が観測されており、これによる地震予知を試みている。 ギリシャチームの予知的中率は60%とされ、ギリシャ政府公認となっているとのこと。
ギリシャ方式のデータ解析には、国内の地震学者の一部が、疑問を投げ掛けているものの、今年度に気象庁は2億円の研究費で、阪神大震災の震源地に近い淡路島北部20か所に地電流観測点を設置し、さらに7か所に地磁気観測点を設置することを決めた。
 一方、アメリカEPRIジャーナル最新号は、スタンフォード大学地球物理学科クレージースミス教授らが「大地震の一か月前から数時間前に掛けて地磁気異常が観測されていることから、地磁気観測が地震予知に有効である」と唱えていると報じた。アラスカ地震、アルメニア地震、ロスアンゼルス地震など過去8回の大地震でも、通常の地磁気変動の2〜3倍の変動が観察されている。特にロスアンゼルス地震の際、震源地から3マイルの海軍基地の観測で、通常の300倍の地磁気変動がみられた。EPRI は現在サンフランシスコ湾東部の人口密集地を通っている活断層上に地磁気観測網の整備を進めている。また、カリフォルニア州の中央部や南部にも同様な観測施設が設置され、 データ収集が行なわれている。この地磁気観測による予知では、いかに車などの磁気雑音を取り除くかが重要である。また、長期的な観測が必要であり、データの蓄積が大切である。
 これらの観測には、微小な地磁気の変化を捕えることができる高感度な磁気センサが必要である。もっとも高感度な磁気センサであるSQUIDは、液体ヘリウムが必要なため、これまでフィールドにおける使用があきらめられていた。しかし、高温超伝導体SQUIDの開発により液体窒素や小型冷凍機により簡便にフィールドでSQUDを使えるようになってきたため地震予知研究に、より高精度な地磁気観察データが使用可能となることが期待できる。
 以上のように、地電流や地磁気の微小変動を捕える、観測網の整備や観測技術の向上により、地震の予知研究が進められ、阪神大震災と同じような災害が繰り返されないことを望むものである。

(Wildcats )


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