SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.3, June 1995, Article 4

Y系バルクで 2 T 級( 77 K)着磁

 酸化物超伝導体のバルク材に関して、磁束線が超伝導体にトラップされることを利用した、いわゆるスーパーマグネット(または trapped field magnet=TFM)としての応用が期待されているが、最近Houston大の Weinstein 教授らのグループが 77Kで 2テスラの磁束トラップに成功したことを伝えてきた。
 磁束線を超伝導体にトラップさせるためには強力なピン止め中心を導入する必要があるが、同グループはY123のバルク試料にUO3を加え、それに熱中性子を照射して試料内部で核分裂反応を起こさせることによって円柱状欠陥を導入した。この時、導入される円柱状欠陥は重イオン照射などの場合と異なり、ランダムな方向となっているが、このようなランダムな方向に配列した円柱状欠陥(いわゆる "sprayed" columnar defect)は平衡に配列した場合よりも有効なピン止め中心となることが理論的にも予想されている(T. Hwa, P. LeDoussal, D. R. Nelson, and V. M. Vinokur, Phys. Rev. Lett. 67 (1993) 3545 )。上記のトラップ磁場はサイズ2cmφ×0.8cm のバルクを用いることによって達成された。
 核分裂反応を用いるということで、放射能の問題が気になるところだが、実際の放射能はプロトン照射の10分の1程度であり、また、コスト的にはプロトン照射の20分の1程度ということから、Weinstein氏いわく「この方法を用いることはかなりのメリットがある」ということである。

(ぽんちゃん)


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