SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 16

強磁場の発生と利用に関する国際ワークショップ開かる

 平成7年2月20〜22日の3日間、つくば市の金属材料技術研究所で「強磁場の発生と利用に関する国際ワークショップ」(International Workshop on Advances in High Magnetic Fields, AHMF'95)が行なわれた。この会議は金属材料技術研究所が強磁場ステーション(Tsukuba Magnet Laboratories)をオープンするのを記念し、科学技術庁の国際ワークショップ費を使って開催することが去年の7月に決定した。急遽、前田弘、木戸義勇両氏を中心として組織委員会を結成し、世界の強磁場研究所と強磁場関係研究者に協力と参加を呼びかけた会議である。
 宣伝期間、準備期間は半年と短かったが最終の参加者は日本人199名、外国人(米、英、仏、独、ベルギー、オランダ、ロシア、ウクライナ、オーストラリア、ブラジル、中国)51名と大きく膨れ上がり、発表論文数も136に及ぶ大きな会議となり、Workshopと呼ぶより国際会議と呼ぶほうがふさわしい規模と内容になった(参加者A氏いわく、MTやアプライドスーパー級に内容が豊富で精選されている)。
 今年に入ってからは会場の規模を考えて、宣伝を控えめにさせていただいた。このため開催をご存じなき方がおられたら、この場を借りてお詫び申し上げたい。強磁場ステーションとそこに設置される強磁場装置(80T級ロングパルスマグネット、21T大口径超伝導マグネット、40T級ハイブリッドマグネット)に対しての内外の関係者の興味の強さを反映して、このような大きな会議になったものであろう。科技庁の援助で、参加費が無料になったため、という説もある。
 会議は主に招待者による基調講演、一般参加者によるポスター展示、さらに細かい問題に関するパラレルセッションによる講演が行なわれた。会議で中心になったテーマは強磁場発生装置の開発計画であり、金材研(NRIM)及び米国国立強磁場研究所(NHMFL)の1GHzNMR用超伝導マグネット計画(23.5T級)、NHMFLの45 T 級ハイブリッドマグネット計画、60T 級擬定常パルスマグネット計画、等のいくつかの研究所で進む強磁場マグネット開発計画と、その進行状況についての報告が行なわれた。なお、NRIMの40T級ハイブリッドマグネットは計画の最終局面に入っており、関係する数多くの報告が行なわれた。
 この会議のその他の特徴は、強磁場に関係する材料について数多くの発表が行なわれたことである。これは、主催機関が金材研であることも関係していると思われる。高強度導体材料に関する報告が5件、金属系超伝導導体材料に関する報告が9件、酸化物系超伝導導体材料に関する報告が19件、超伝導体の高磁場物性に関する報告が19件もあった。
 磁性材料、半導体、有機物、金属錯体の高磁場物性に関する報告は合計すると49件あり、超伝導の高磁場物性と合わせると半分近くが、高磁場物性に関する報告だったともいえるが、この分野はこの種の国際会議では、もっと比重が高いのが普通で、むしろ少なめという印象を受けた。
 スーパーコムの読者が興味をもつテーマとしては、強磁場発生用を意識したBi系酸化物超伝導体研究が数多く発表されたことである。特に長尺特性、小コイル特性を決定づける加工条件、熱処理雰囲気、炭素残存量等の影響について多くの報告がなされた。また、強磁場発生に関連して導体強度を改善する必要から、各種元素の添加により銀シースを強化する研究が数多く報告された。
 計画として興味深いのは、1GHz NMR用超伝導マグネット計画で NRIM, NHMFLいずれの計画でも21.1T 〜23.5 T の磁場領域には酸化物系超伝導材料を使うことが決定している。この計画は高磁場発生のみならず、酸化物系超伝導線材が、ソレノイド巻き(パンケーキ巻きでは磁場均一度が悪くなる)で大きなコイル電流密度を実現できるか、永久電流モードで運転できるか、といった根本的問題に解決を与えなくては実現しない大変野心的計画で、今後の進展が待たれる。
 なお、プロシーディング集はPhysicaBの特別号に掲載予定である。

(つくば I 生)


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