SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 15

冷凍機冷却の小型限流器モデルを発表 〜 東芝

 電気回路に短絡などにより事故電流が流れた際、この電流を絞る限流器の開発研究が高温超電導体を用いて国内外で行なわれている。本誌Vol. 3, No.5では米国 Power Superconductor Application Corp. (PSA)社のBi 系線材を用いた誘導方式の限流器について紹介している。このほか超電導‐常伝導転移方式の限流器の開発も試みられており、東芝は冷凍機で冷却するプロトタイプの小型限流器モデルを発表している(Jpn. J. Appl. Phys. 33(1994)L1592)。
 これはSrTiO3基板に成膜したY系超電導膜を限流素子として用いたものである。良好な限流特性を得るには全体にわたってTc、Ic が均一な試料を作る必要があるが、東芝はクラスターイオンビーム法を用い、直径30mmの基板上に均一な Tc、Ic 特性の超電導膜を作成した。素子には限流時の過熱および熱衝撃の緩和を図る目的で約20nmのAgを保護膜として蒸着してある。
 試作した限流器モデルの構造を図1に示す。素子間を実効電圧100V、ピーク電流150Aの電気回路に接続しそのときの電流波形を測定したのが図2である。約15A(限流素子の Ic に相当する)で限流し、電圧ピーク時において7A 以下に限流している。また、図3 に示すように動作温度の低下とともに限流開始電流( Ic )は増大しているが、限流電流は大 きな変化を示さない。このことは動作温度の低下が限流器の容量増加に有効であることを示している。
 東芝研究開発センター基礎研究所、研究主幹の芳野久士氏は「この研究はSuper-GMの研究の一環で行っているもので、まだ機能検証の段階であり、現在高温超電導体における種々の課題を明確にしているところである。最大の課題は通電容量をいかにして上げるかである。現在約50 Aまで達成している。今後冷却能力の向上、素子の直列、並列化をはかることにより5〜600Aの通電容量を目指したい」と述べている。同社はこの国家プロジェクトとは別に東京電力と共同で金属系超電導線を用いてすでに6K、2000Aの実用レベルの限流器試験に成功している(本誌Vol.3, No. 5 )。高温超電導体を用いた限流器が実現できれば、コンパクトで冷却コストが安くできるので、応用分野を広げた新しい展開が期待される。 左上:図1 左下:図2 右:図3

(SYH)


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