SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 11

高温超伝導体で高速通信を企図 〜 東北大通研

 東北大金属材料研究所立木昌教授と同大電気通信研究所山下努教授は高温超伝導の高速通信への応用を提案し、実験を計画している。
 高温超伝導体中にプラズマ振動が起こることは、東大工学部内田慎一教授のグループの行った高品質ランタン系単結晶における赤外線反射の実験によって明かにされていた [K.Tamasaku, Y.Nakamura and S. Uchida: Phys. Rev. Lett., vol.69, 1455 (1992)] が立木教授らはこの現象の詳細を理論的に解明し、[M.Tachiki, T. Koyama and S. Takahashi : Phys. Rev. B, vol. 50, 7065 (1994)] 検討した結果種々の応用が考えられ、その一つとして高速通信を指摘したものである。
 高温超伝導体の酸化銅面に垂直方向に伝わるプラズマ振動は、通常のプラズマ振動に比較してエネルギーが低く5meV 程度であって、超伝導エネルギーギャップより小さいため減衰が起こらないという特徴がある。周波数ではテラヘルツ級であり、従来から通信に使われている高周波と光の中間に相当し、これまで適当な発振器(または光源)が得られなかった領域である。
 このプラズマ振動をジョセフソン効果などによって励振し、超伝導線を伝送させれば通信が可能となり、100GHz程度の変調が可能と考えられ、現在最高の光通信より一桁大きな通信容量が期待できる。また、高温超伝導体を共振器として用いればサブミリ波の光源が得られる。ジョセフソン発振器の場合は大きな接合を作っても電流は周辺部にしか流れないため大出力を得るのは困難であるが、プラズマ振動は超伝導体全体を流れるため1W/cm2 程度の高出力が期待できる。この出力を適当な媒体で伝送すればサブミリ波の通信が可能となる。
 以上は主に理論的に得られた可能性であるが、今後実験的に検証して行くという。超伝導(特に高温超伝導)の新しい応用として今後の成果が期待されるが、今後の研究に関して立木教授は「低周波プラズマによる発光素子にはc軸に平行な平面を持つ良質の単結晶を得ることが必要で、完全に近い単結晶育成が急務と考えられる」と述べている。

(SIS)


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