SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 10

米国高磁場研究所 25T 磁石開発を開始 〜 1.066GHz NMR用に

 フロリダ州 Tallahasse の国立高磁場研(NHMFL) は 25T 超伝導磁石を高分解能核磁気共鳴(NMR)装置用に開発するプロジェクトを開始する。本磁石は Nb-NbTi および Nb3Sn 磁石で 21T をかけ、さらにその中に組み込まれた高温超伝導コイルで 4T を発生して、合計 25T を達成しようとするもので1.6K での運転が予定されている。ボア内径は 62mm と大きく、そのなかで NMR 測定を行うことで、プロトン換算で 1.066ギガヘルツでの共鳴を起こさせることができる。開発には IGC社 (Intermagnetics General Corporation) が参加の予定。これはビスマス系高温超伝導体線材の臨界電流が低温になると金属材料よりも 20T 以上の磁場で優れていることを利用しようとするもの。内部の酸化物超伝導コイルだけでなく、外側の金属線材コイルの両方にまだ技術上の課題があるとされる。
 NMR は磁場を強くさせることで、分解能と S/N 比(信号/ノイズ比)が上がることが知られ、NMR 研究者にとっては少しでも高い磁場を使いたいところ。これまで 400-600 MHz 台の NMR がわが国の企業、研究所、大学などでも多く利用されるようになってきているが、最近、神戸製鋼とオックスフォードインストルメンツ社が共同で作った 17.5T 磁石を用いる 750 MHz 級が現在の最高となっている。オクスフォード社はさらに米国 Battelle 研究所と共同で DOE より約7億円の援助を得て、21T, 900 MHz 実現を目指している。
 これらはいずれもNb-NbTi および Nb3Sn の金属線材を用いた磁石で、21T を達成するものであるが、すでにオクスフォード社と英国クライオジェニックス社は NMR 用のコンパクトで中心磁場付近の磁場均一度の高い磁石の開発に成功したと、2月下旬筑波で行われた強磁場国際会議で発表された。価格は 20T 磁石本体が5000〜8000万円程度と見られている。
 すでに本誌前号で科技庁が第2期マルチコアプロジェクトで金材研を中心に同種磁石と 1 GHz NMR の開発を進めることを表明しているので、超強超電導磁石は日米の開発競争の様相を帯びてきた。これに対して実用マグネットの先端は英国企業が担っている構図となっている。

(SSC)



続報・訂正
750MHzNMR用磁石フル生産に・訂正とお詫び(Vol. 4, No. 3)

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