SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 9

米国エネルギー省高温超電導線材開発ワークショップ開催 〜 現状を総括

 1月31日より2月1日にかけて DOE はフロリダ州 Saint Petersburg で Wire Development Workshop を開催し、同省のコントラクト関連者から現状を報告させた。主な報告事項は以下のとおりである。
 IGC 社は PIT(Powder in Tube) 法での Bi2223 テープの開発において、94年中に 20 m 以上の線材での臨界電流が向上し、年末には 77K, 0T で 42A に到達した。また90 m 長では 35 A であった。一方、 37 芯の 850 m の長尺テープでは超電導部分の臨界電流密度は 10,500 A/cm2、テープ全体では 2,500 A/cm2 に達した。短尺物ではこの約4倍である。
ASC 社はここ数ヵ月で以下のような高温超電導コイルを製造した。
 1)海軍用に開発した同極モーター用の 40,000 A-turns コイル一対
 2)空軍用(Wright Patterson Air Force Base, airborne generator)のレーストラック型コイル - 20K 使用  で 68,000 A ― turns
 3)マグレブ用コイル ― 45K 使用で 25,000 A-turns
 4)冷凍機直結型磁石 ― 27K 使用で 2.16 T
 コンサルティング会社である American Composite Education, Inc. は、同社がフロリダ州 Stuart に SSC 用に開設した Advanced Magnet Laboratory で開発したコンピュータ制御方式の巻線技術が、コスト低減化の面で低温、高温超電導コイルの巻線技術として有効であるとし、参加者に共同研究を呼びかけた。
 AC ロス低減のためには多芯線にツイストをかけ、シース材料の抵抗を上げる必要があるが、ASC 社は 3.7 mm ツイストピッチの多芯線テープで 13,500 A/cm2 を達成(77K, 0T, 1mV/cm)、3.6 mm ツイストピッチの多芯丸線で 10,000 A/cm2 を達成した。また酸化物分散強化型の銀合金シースを高抵抗かつ機械的に強化した材料として用いることで臨界電流 15,000 A/cm2 を達成した。またロスアラモス国立研との共同開発で貴金属合金シース材を用いて 20,000 A/cm2 を達成した。両方法ともにシース抵抗は 77K で 1 mWcmであった。これにより同社はブルックヘブン国立研の Suenaga 博士の解釈に従って,ビスマス系の PIT 法線材よりも交流ロスがはるかに軽減されたものとしている。
 40K 以上の温度ではビスマス系線材の高磁場下での利用ができないと考えられるので、General Electric 社、および IGC 社はタリウム1223系線材の開発を続行している。GE 社はスプレーパイロリシスおよび電気泳動電着でプリカーサを厚膜として作製、タリウム蒸気中で反応させる。ラボスケールの反応器で 20 cm 長のテープを作製した。臨界電流は 105 A/cm2 を達成。粒子は 0.1 mm のスケールで面内配向し、c- 軸に配向している。磁場特性にすぐれ、40K では 2T で臨界電流がゼロ磁場の半分となる。
 IGC 社は PIT 法で Ic として 25.2 A を得た。77K では 4T まで、 60K では 7T まで比較的臨界電流は磁場に対してフラットな依存を示していることが勇気付けられる結果として報告された。ただし、長尺物では弱結合のため非常に弱い磁場の内に臨界電流の低下が見られる(77K で Ic =1A)。IGC 社の Halder 氏によれば「ビスマス線材は何週間も熱処理しなければならないがタリウム線材は数時間で済む。したがって、タリウム線材の方がはるかにコスト安となろう」ということである。

(Iiyama)


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