SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 6

Tc 100Kを超す超伝導体数種の高圧合成に成功 〜 無機材研

 ここ数年来、新しい酸化物超伝導体の探索における高圧合成の有効性が認識されだしている。超伝導体の高圧合成は日本の研究グループの貢献が際だっている分野であり、京大化研、超電導工研、電総研、無機材研等において活発な研究が続けられている。最近、無機材研の室町英治氏らのグループにより、高圧下では一般的に、単位格子あたりのCuO2 面の枚数 n が大きな高次構造が安定化される傾向が指摘されており、これに添った形でいくつかの新しい高圧安定超伝導体が発見されている。
端的な例としてMSr2Can-1CunO2n+3(M=B, Al, Ga)が挙げられる。この化学式で n=2 の場合は1212 相と呼ばれるものに一致し、常圧下での安定層である。一方、室町氏らによると高圧下では n=4〜6 程度までの高次構造が安定化し、Tl - 12(n-1)n 系と同様な超伝導体系列が合成できる。B, Al, Ga のいずれの場合もn=4 の時、最高のTcが得られ、約110Kに達する。
 一方、同じく室町氏らにより炭酸基、硫酸基等の酸素酸基を含む系についても高圧合成の有効性が指摘されている。実際に無機材研では (Cu0.5C0.5)m Bam+1Can-1CunO2(n+m)+1 (m=1, 2 ; n=3〜5 ) 、(Cu0.5S0.5)Sr2Can-1CunO2n+3 (n=3〜7) の各系列の高圧合成に成功しており、両者ともに100K以上のTcを持つメンバーを含んでいる。特に(Cu, C)系1234 相の117Kは炭酸塩型超伝導体の中での最高値である。また、金材研熊倉浩明氏らによると(Cu, C)系はJc 、不可逆磁界等についても非常に興味深い特性を持っている。
 例えば中性子照射によりピン止め点を導入した(Cu, C)-1234の粒内 Jc は1T、77Kにおいて6×105 A/cm2 に達しており、現段階でのチャンピオンデータの一つとなっている。
 超電導工研における鉛系超伝導体、京大化研における塩素を含む超伝導体の発見も最近の話題であり、超伝導体の高圧合成はここしばらく注目すべき分野と思われる。

(HP)


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