SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 5

冷凍機冷却型高温超電導マグネットで3テスラに到達 〜 4.2Kでは4テスラ

 住友電工は、ビスマス系高温超電導線を使用し、市販の20KのGM冷凍機により冷却することにより世界で初めて3.0テスラまで発生できる冷凍機冷却型マグネットシステムの開発に成功したと発表した(前号に一部報告)。このシステムは、40mmφの常温空間を持ち、冷媒を全く使用せずにコイル冷却が可能である。また。2.5テスラの磁場では150時間の長時間運転にも成功している。
 マグネットの形状は巻線内径60mmφ、外径180mmφ、高さ150mmと実用規模の内径サイズを持っている。トータルのコイル重量は約27Kgである。多芯線を用い、リアクト&ワインド法により巻線し、コイルが作製された。この方法は一般に行なわれているワインド&リアクト法に比べ、絶縁体の耐熱性が全く不要で有機系の絶縁テープが使用でき、コイルのパッキングを高くできる特徴を有している。さらにボビン材としても耐熱性が不要で冷凍機で冷却するのに有利な熱伝導性良好な銅を使用できる特徴もある。
 コイルに150Aまで電流を流したときに中心磁場で2.9テスラ、このときのコイル内径部に発生する最大磁場で3テスラに到達した。さらに123Aでは最大磁場で2.5テスラで150 hrの連続運転に成功した。コイルの発生電圧は比抵抗で6.5×10-15 Ωm程度。運転時のコイルの温度は21Kで非常に安定であった。
 また、液体ヘリウム温度(4.2K)では200Aを通電でき、世界で初めて高温超電導マグネットで最大磁場4.0テスラまで安定に通電できることがわかった。「高温超電導線がさらに量産できるようになれば、線材の10テスラ以上の電流ー磁場特性が良好であることを考えると10テスラの高磁場発生は、充分可能な範囲にある」と住友電工大阪研究所超電導研究部の大倉健吾氏は話している。

(ハナマルキ)


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