SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.2, Apr.1995, Article 2

高温超電導磁石で世界最高24テスラ達成 〜 住電・MIT

 住友電工はマサチューセッツ工科大学(MIT)との共同研究でビスマス系高温超電導線を用いたコイルを用い、世界最高の24テスラの磁場を達成したと発表した(AHFM ' 95,' 95/02/20-22、筑波)。
 今回の成果は、高温超電導線材の応用として期待されている、従来の金属系超電導線では不可能である21テスラ以上の高磁場発生を目指して行なわれたもので、MIT・フランシスビッター国立磁石研究所(FBNML)の高磁場ハイブリッドマグネットと住友電工で開発されたビスマス系(2223)超電導マグネットを組み合わせて評価された。22.59テスラの外部磁場をかけた状態で、高温超電導マグネットで1.46テスラ(4.2K)を発生し、外部磁場と合わせて24.0テスラの磁場発生に成功した。この時の運転電流は116.5Aで臨界電流密度は25,900 A/cm2である。今回の評価では、液体ネオン(27K)を冷媒として用いても行なわれ、27Kでは同じ外部磁場22.59テスラのもとで0.84テスラを発生し、合計の磁場は23.4テスラとなった。運転電流は67.0Aで臨界電流密度は14,900 A/cm2 であった。
 従来の金属系超電導マグネットは1.8Kまで冷却しても21テスラ程度を発生することが限度で、これ以上の静磁場は従来、水冷銅マグネットを用いる以外には方法がなかった。高温超電導線は金属系超電導線と比べると、はるかに高い磁場まで超電導状態が維持でき、高磁場下で優れた臨界電流密度を持つため、これらの線材を用いた超電導マグネットが期待されていた。
 今回、住友電工が開発したコイルは内径40mm、外径108mm、高さ113mmでビスマス系(2223)銀被覆多芯超電導線材を用い、リアクト&ワインド法で巻線したダブルパンケーキコイル17個(線材総長122m)から構成されている。(MIT の Iwasa 博士によれば、使用された高温超電導コイルの Ic は 磁場2.2Tで190A、24Tでも120A(4.2K)と磁場による劣化が少なかった。コイルのターン数は1565ターンであり、テープ幅は3mm、多芯線数は61本である)。高磁場用マグネットとして性能を発揮できるよう、電磁力対策としてステンレステープを用い、強い磁場のもとでも超電導状態が安定して発揮できるようにしている。また、今回のマグネットの評価では冷却、昇温を多数回繰り返した後でも性能に変化が認められず、安定した結果を得たという。
 今回の成果により、超高磁場マグネットが技術的に可能であることがわかったので、今後ビスマス系超電導線を用いた1GHz/NMR (23.5テスラ)マグネット等の開発が本格化することが期待される。1GHz/NMR はタンパク質や遺伝子の解析に必要不可欠とされ、高温超電導線を用いないと実現できないと考えられている。  開発者の一人である住友電工大阪研究所超電導研究部の上山宗譜氏は「これまで線材や小コイルの特性評価の結果、高磁場下で優れた特性を有することは判明していたが、今回φ40mmの空間に1テスラ以上を発生できるマグネットで実証することができた。今後1GHz/NMRやハイブリッドマグネット等、実際の高磁場マグネットに沿った形での開発を進めていきたい」と話している。

(ZYAN)


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