SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 26

新刊紹介 「磁束ピンニングと電磁現象」

(産業図書:定価8034円)
 昨年暮、標記単行本が刊行された。著者はこの分野の世界的リーダーの一人である松下照男教授(九州工業大学情報工学部)。超伝導に関する序論と電磁現象の基礎論から始まって、臨界電流密度の測定法、おもに金属系物質を中心に従来蓄積された磁束ピンニング機構や特性に関わる理論と実験データが詳細に議論されたあと、高温酸化物超伝導体と今後の問題点についても、一章ずつが割かれている。酸化物に関するデータの紹介が少ないのが残念であるが、まだ、系統的に議論ができるほど、酸化物の挙動がわかっていないというのも理由の一つであろう。本書は初学者にとって必ずしもスムーズに読みこなせる本ではないが、磁束ピンニング現象などに関してこのようなまとまった成書は従来なく(1972年発刊のCambell & Evettによる有名な " Critical Currents in Superconductors"以降初めて?)、関連分野の研究者にとっては貴重なバイブルとなると思われる。

(APKK)


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