SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 21

導電性無機化合物の研究盛んに 〜 高温超電導研究の影響

 我が国では電子相関の強い3dなどd金属複合酸化物の研究が、通産省を中心として支援されるつくば市の融合研プロジェクトとして昨年より数名の規模で発足し(リーダー:十倉好紀東大工学部教授兼任)、また、文部省科学研究費重点領域研究のグループとして95年度より、「モット転移近傍の異常金属相」が発足する(代表:福山秀敏東大理学部教授)。これらはいずれも高温超電導で話題となっている、スピンと電荷の特異なふるまいに着目したものである。十倉氏らのグループからは既に(La,Sr)MnO3 などで巨大磁気抵抗や磁場誘起相転移などが発見され、実用的観点からも世界的な注目を集めている。
 一方、海外に目を転じると研究論文に既にその傾向が現われている。例えば Journal of Solid State Chemistry (Editor : J. M. Honig)の95年1月号では全45報のうち21報がこれに関連する論文であり、日本からの論文も数報含まれ、米国、仏、インドなどからの論文が含まれる。これらの中には超電導は見いだされていないが、その他の性質はBa(Pb,Bi)O3に極似したCH3NH3SnI3など水溶液から析出するハロゲン化物金属なども含まれ、興味あることには高温超電導研究でも活躍したIBMワトソン研のSchlesinger,Laibowitzらのグループから発表されている。この物質は 5 s軌道の関連する金属で低キャリア密度の半金属となっているという。
 高温超電導の物質探索はより幅を広げて新しいフェーズに入りつつあるようだ。

(PKK)


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