SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 20

熱定数総合評価装置を製品化、販売開始 〜 同和鉱業

 同和鉱業(株)は岩手大学工学部能登宏七教授らの開発した極低温領域での全自動熱定数評価装置を東京工業(株)と共同で初めて製品化、販売を開始した。同装置は熱伝導率、熱拡散率、熱起電力などを総合的に評価できる装置として能登教授らが開発してきたもので、比熱も計算により求めることができる。超電導材料を始め、その他の材料の低温熱物性の評価に新しい武器となるとみられる。
 超電導材料を応用したシステムを設計するにあたり、超電導材料や各種低温用材料の液体ヘリウム温度から液体N2温度での極低温領域での熱的物性値(熱伝導率κ、熱拡散率α、熱起電力S、比熱C)を評価することは不可欠である。
 熱伝導率κは定常熱流法により測定する。試料の上端に取り付けたヒーターよりヒートシンクに接続した他端へ熱流Qを定常的に流し、この時試料に生じた温度勾配 ΔTを測定することにより、熱伝導率κを次式により求める。
 κ=(Q/ΔT)・(l/S)
ここでSは試料の断面積、l は温度計間の距離、ΔTは温度勾配、Qは試料に流す電流である。
 熱拡散率αはパルス状加熱による非定常熱流法により算出できる。試料温度を安定した後、微小な金属被膜チップ抵抗を熱源に用いて、3秒から5秒の電流パルスを加え、その後の試料上の2点の温度T1、T2の時間変化を記録することにより求める。 諸材料の熱的物性値(熱伝導率κ、熱拡散率α、熱起電力S、比熱C)はκ=ρ・C・α(ただし、ρは密度)という関係で結び付けられているので、ρが既知の場合、κとαを独立に測定することができれば比熱Cを算出することが可能である。  また、起電力S は試料上にオーミック電極を形成し、定常熱流を流したときの温度差ΔT、電極間の電圧ΔVよりS=(ΔV/ΔT)により求めることができる。
製品化を坦当した同和鉱業中央研究所の吉澤秀二室長は「ステンレス標準試料などで試験したところ、米国標準局(NIST)の基準データとよく一致しているため、測定方法の信頼性は高いと考えている。また、デモンストレーション用の装置を組立中である」とコメントしている。
 価格は冷却、真空など周辺装置を含め、標準で1300万円。今後の超電導を応用したシステムの大型化や複雑化をにらみ、低温材料の高精度の熱定数の必要性がますます高まることが予想され、このような評価装置がシステム設計の効率化に一役買うことが期待される。

(S.Y.)


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