SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 17

高温超電導SQUIDの開発状況

 高温超電導の応用として、最近急速に実用化が進んでいるSQUIDの開発状況を取り上げる。
 昨年10月、ボストンで開かれ たASCでは、多くの高温高温超伝導SQUIDの発表があり、感度(磁場分解能)の向上には目をみはるものがあった。コンダクタス社が、10fT/\sqrt{Hz} を発表し、ニオブと肩を並べる性能をYBCOのSQUIDで達成した。ASCでの発表の特徴はSQUID素子の設計に工夫が凝らされてきているとともに、ニオブ系で採用されている磁束コイル、マルチループなど、超伝導配線技術を用いた磁束濃縮技術が大きく進展し、多くの研究機関から20-30fT/テHz のデータが報告されたことにある。また、高温超伝導SQUIDで懸念されていた低周波ノイズも、交流バイアス電流を用いることで解決した。ニオブ系SQUIDでも市販品で最近ようやく数fT/テHzになったことを考えると、高温超伝導SQUIDが十分に実用レベルの特性を有することが実証されたと言ってもよいのではないだろうか。
 SQUIDの応用化検討では、複数の素子を用いた生体磁気計測や、非破壊計測、磁気走査顕微鏡などの研究が一斉に開始されている。日本からも超伝導センサ研究所が高温超伝導16チャンネル計測器を用いた心臓磁場の検出結果を報告し、生体磁気計測への展開を示した。このように、高価なヘリウムを必要とした微小磁気計測が、液体窒素で簡便に計測可能となりつつある。従来はSQUIDの使用を断念していた砂漠での地質調査や、工場における各種材料のキズ検査、航空機などの亀裂診断などに高温超伝導SQUIDが使用できる可能性がでてきており、市場の広がりが期待できそうである。超伝導センサ研究所も来年3月で終了ときくが、その成果をぜひ企業へと継承し、実りある超伝導産業を育ててもらいたい。

(Wildcats)


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