SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 6

超電導電力ケーブルの実用化テスト開始(ASC社)

 超電導ケーブルは再び夢広がりつつある。高温超電導体への期待は大きい。導体は曝される自己磁場を小さくできるので、実現が容易と考えることもできる。日米で高温超電導ケーブルの研究が開始されている。
 本紙スーパーコムVol. 3, No.5 (1994.12)の記事「米国EPRIプロジェクトで電力ケーブル開発へ」に記載されているように、米国では高温超電導ケーブルの580万ドルプロジェクト(期間4年)が開始されることになった。これに関連してNew Technology Week (Monday, October 24, 1994)に記事が掲載されたが、既報記事を越える内容はない。本プロジェクトはASC社の高温超電導体が電力ケーブルとして利用可能かどうかを検証しようとするもので、EPRIのケーブル・コンセプトに従いピレリー社がケーブル製造を分坦する計画である。4年のうち約1年はデータ取得と試験を行なうが、資金が潤沢になれば短縮が可能であるとしている。ASC社のユーレク氏は「技術は既に存在する。EPRIやDOEの人は我々がもっと早くこれを実現できることを知っている」と強気の発言をしている。超伝導SRリングへの電流リードの実績に基づいているのだろうか。
 低温超電導体による超電導ケーブルの開発が今世紀後半から行なわれ、かなりの技術水準に達したが、経済的ブレークイーブン容量が必要容量よりもはるかに大きいことで1980年代に研究開発がとまってしまった。1987年の高温超電導体の発見により冷却容量の低減によりブレークイーブン容量が大幅に下がると予想され、高温超電導ケーブルへの期待が高まった。世界のケーブルビジネスは年間7億ドルという。超電導体メーカーは参入のチャンスである。電力会社は既存のケーブル敷設場所の有効利用におおきな関心がある。
 日米ともパイプ内に超電導ケーブルを挿入することを考えている。我が国ではパイプ内に液体窒素を満たす低温電気絶縁方式を採用している。臨界電流密度は常温絶縁方式では、200,000〜1,000,000 A/cm2 (77K)、低温絶縁方式では10,000〜20,000 A/cm2 (77K)が必要といわれている。日本方式では低温電気絶縁技術、米国方式では交流磁場によるパイプ渦電流損失が気になるところである。超電導体の交流損失を低減するため、電流と交差する磁場の発生を極力低減することが望ましい。米国には優れたダブル・ヘリカルBrookhaven方式がすでに開発されているが、常温絶縁方式では外部に遮蔽導体が使用できない。長距離の冷却路の信頼性の確保も必要だと思われる。参考にIEAがまとめた高温超電導ケーブルの設計例を表*に示す。いずれにしても適正な価格の高温超電導ケーブルが開発されれば大いに使用されるだろう。今後線材やケーブルの具体的設計を含め、高温超電導ケーブルの可能性探索研究が活発化すると期待される。
 * R. F. Giese, "Superconducting Transmission Cables" Report of ANL for IEA Implementing Agreement for a Co-Operative Programme for Assessing the mpacts of High-Temperature Superconductivity of the Electric Power Sector
表 高温超電導交流ケーブルの設計仕様の日米欧比較
                                         
東京電力Brite-EuramUSI
仕様1,000 MVA600MVA1,000MVA3,000MVA 350MV
容量容量容量容量容量
作動電圧66 66 220 220 138
作動電流 8,7505,250 2,6257,8741,500
導体形状 同軸 同軸 同軸同軸単線
絶縁体 温度・材料 低温プラスチック 同左 同左 同左常温PPP
導体内径(mm) 3333NANA25
シングルフェーズの外径(mm) 13013019226765
必要臨界電流密度( A/cm2 1062×1052×1052×1052×104
内部導体表面での磁場(T) 0.150.09NANA0.03

(九州大学・(財)電力中央研究所 田中祀捷)


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