SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 5

大容量のBi2223ケーブル 〜 住友電工・東京電力

 住友電工と東京電力は共同開発により、Bi2223相高温超電導体を用いた電力ケーブル用導体について、電流容量を大幅にアップさせるとともに、実用化に向けての課題である交流損失低減に有効な導体構造について、11月に北九州にておこなわれたISS'94で報告した(J.Fujikami et.al.,"Effective reduction of ac loss in HTSC cable conductor")。
 同グループは、一昨年に5m 長3,000Aのフレキシブル多層導体を製作、通電試験に成功したことを発表しているが、今回製作されたのは、ほぼ同様の構造を持つ1m長の多層導体(12層と14層)で、12層導体でIcの値(10-13Ωcriterion)は5.8kA、14層導体では電源容量の関係で測定不能であったものの、使用した線材の性能から12kA程度であると見積もられている。同グループは、66kVで1,000MVAの電力を送電する高温超電導ケーブルの開発を目指しているが、要求される8.8kArms (12.5kAp )相当の導体が作製できたことを意味する。この導体について、11.3kApの交流電流を安定に通電できることが確認されている。
 また、これまで、高温超電導ケーブル実用化には必須の課題である交流損失の低減についても進歩があった。これまで多層導体では、交流電流を流したときに、単層導体と比較して、大きな交流損失が生じてしまうことが問題となっていた。この原因についてFujikamiらは隣合った層間にいわゆる“カップリング電流”が流れるためだと考え、図1に示すように層間の絶縁をほどこしたところ、損失が格段に下がることがわかった。図2に2層線について、絶縁層を設けたものとそうでないものの、交流損失の電流依存性を示すが、絶縁層を設けたものでは1桁程度交流損失が低減されている。この結果、交流損失が14層のものについては、実用ベースの9kApを超える、11.3kApまで無損失の交流電流を流すことが可能となった。

図1

図2

 (ぽんちゃん)


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