SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 4

省エネ型4.5K小型冷凍機発売 〜 Boreas社製造オックスフォード社販売

 米国マサチューセッツ州のBoreas社は、かねて熱効率がこれまでの小型冷凍機よりも2倍は高いという小型冷凍機の開発を発表していたが、オックスフォード社(本社英国)が同社製品の代理店となり、米国で販売が開始されたことが、1月20日の未踏科学技術協会主催のシンポジウム懇親会の席上明かとなった。日本ではまだ設置例がないもようである。
 オックスフォード社より出されている資料によるとこの冷凍機の規格は4.5Kで1Wの冷凍能力をもち、必要電力は3kW以下であり、コンプレッサーは空冷型でよいとされる。これは現在のGifforrd - McMahon型を改良した同種冷凍機の必要電力が5-7kW 程度であることに比較すると、設置における電力と冷却の問題がはるかに軽減され、家庭用エアコン並みの使い勝手となる。
 本冷凍機の基本アイディアはMITの低温工学ラボにより提出されたもので、1988年以来米国エネルギー省のSBRIプロジェクトの支援を受けて、Boreas社が設立され、その後ベンチャーキャピタルの支援で商品化開発を進めてきたもの。MITでの研究開発はJ. L. Smith教授により、東芝の資金援助を受けて1984年に開始され、Y. Iwasa氏も研究に加わった。技術の特色はGM方式よりもはるかに高いヘリウムガスの膨張比を用いることで、また、20K以下の熱交換をこれまでの蓄熱方式から向流法に変えており、当初信頼性に問題があったとされるJoule-Thomson弁を使用していない。冷却は初段で80K、2段目で20K、3段目で4.5K に達する。コンプレッサーから20気圧のヘリウムガスが送られ、約1気圧で戻ってくる。最大の特色は3段目での膨張比がGM型に比較して、20気圧より1気圧と20:1近くに大きくとられている点で、これによりヘリウムの低温での比熱に由来する冷却力低下を補っていることである。また、ピストンの往復周期は従来のGM型より遅いので振動の問題も軽減される。試験では4.5Kで1 Wの負荷の時、定常電力消費は2.6kWであった。
 技術の詳細は第7回クライオクーラー国際会議(1992年サンタフェ)で発表されており、スーパーコム事務局に資料がある。坦当者はMITで本冷凍機の研究を学生時代に行ない、その後Boreas社設立に伴い同社に参加したJ. Alan Crunkleton 氏、(Boreas Inc. Burington, Mass. 01803 USA)。日本を含め、販売はオックスフォード社が行なっている。(オックスフォード・インストゥルメンツ株式会社、102東京都千代田区九段北1-11-11第2フナトビル、Tel: 03-3264-1551, Fax:03-3264-0393)

(PKK)


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