SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 3

冷凍機直冷型磁石で世界最高10テスラ発生 〜 東芝

 東芝は同社がダイキン工業と共同開発した Er3Ni 希土類低温蓄熱体を用いた小型冷凍機Nb-Ti-Nb3Sn 磁石、および、ビスマス系高温超電導パワーリードを組み合わせた冷凍機直結型超電導磁石を完成し、試験の結果 10 テスラを定常的に発生できることを確認し、本年1月中旬ユーザー試験のために東京大学工学部超伝導工学専攻の北沢研究室に納入した。冷凍機直結型磁石で発生した磁場としては、世界記録と見られる。
 今回の製品は水平室温ボア(直径 50mm)を有するもので、クライオスタット全体は 47 ×47 × 70 cmと非常にコンパクトなもの。液体ヘリウムを必要とせず、入力電力(定常)5 - 6 kW 程度で、水冷コンプレッサを用いた冷凍機で冷却する。室温からの冷却には約4日を要するが、いったん冷却が完了すれば定常的に磁場を印加することが可能である。東芝では同種製品をすでに市販しているが、今回のものは特に磁場が高いもの。
 北沢研究室ではこのマグネットの試験を行ないつつ、長時間磁場をかけ続けておきたい磁気科学などの研究に用いたいとしている。博士課程学生の廣田憲之氏によると「さっそくクエンチさせてしまったが、ヘリウムレスマグネットなので”あれっ”という感じで、特になにも変化せず拍子抜けした。ヘリウム移送の手間が省けるので、実験時間を長くとることができ大変嬉しい」とコメントしている。同社で本製品の開発に携わった小林孝幸氏は「中心磁場10Tを発生させる冷凍機直冷磁石を完成させることができたので、今後はユーザーの要望を入れてより使いやすい磁石を開発していきたい」と、また、金子智美氏は「10 T が出たときに試みに横穴ボア中に水を入れてみたところ、”モーゼ効果”が起きていることが分かり、大変印象的でした。私達のマグネットが磁気化学や磁気生物学の分野などで役立ってくれると嬉しいと思います」と述べている。

(まぐまぐ)


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