SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 2

冷凍機直冷型高温超電導磁石2.5Tを40mm室温ボアに安定して発生

 高温超電導磁石が4.2K で1.5テスラを発生できることが示されたのは3年前、2年前には冷凍機直冷型(15K〜20K)で0.68テスラが神戸製鋼から、長時間安定して運転できる1.0テスラが住友電工から報告されていた。’94年代後半に入ってからアメリカンスーパーコンダクター及び住友電工が相次いで冷凍機直冷型で、2テスラを越えたことを発表した。2テスラは通常の電磁石で到達できる最高磁場であるので、いよいよ高温超電導体コイルを用いた磁石が電磁石の性能を追い越し、実用域に近づいたことを意味する。しかも、冷凍機は15〜20K程度でよいので4.2K 冷却に比較すると、冷凍機出力は数倍から数十倍となるので、NbTi磁石と比較すると同レベルの小型冷凍機ではるかに大きな超電導磁石を駆動できるようになる。
 11月に開催されたISS'94等の資料をもとに住友電工の発表した2.1テスラ高温超電導磁石の詳細は以下に示すとおりである。
 コイル(写真参照)は内径40mm、外径108mm、高さ113mmで、銀被覆多芯ビスマス系超電導線を1,200mm用い、リアクト&ワインド法で巻線したダブルパンケーキコイルを17個用いたものである。段式GM 冷凍機で直接伝導冷却し、15K で2.1テスラの発生に成功したもの。18Kでは1.9テスラの長時間安定運転が可能であり、コイル電流密度も冷凍機冷却ではずいぶんと高い6,600 〜7,200A/cm2 である。コイル電流密度は、10,000A/cm2 が越えるべき最初の目標と考えられ、今回のマグネットはこの目標値に近い値となっている。超電導フィラメント部分のJc は34,000〜 67,000A/cm2 である。この磁石は、高磁場用インサートコイルとして評価するため、電磁力対策としてステンレス板を巻き込んでいるという。
 さらに住友電工では、実際に用いることができるようにマグネットを一回り大きくし、材料の特性評価や各種プロセス開発に用いることのできる大きさである40mm室温ボアを持つビスマス系超電導マグネットを開発し、やはり 同じように冷凍機冷却で、21Kの温度で2.5 テスラを安定して発生することに成功しているという。詳細は、2月の金属材料技術研究所が主催する「強磁場の発生と応用に関する国際ワークショップ」で発表する予定という。高温超電導マグネットも 、単に磁場を発生したというような探索段階から、実際に使用することを前提とした応用研究の段階へ進んでいると見ることができよう。
 開発者の一人である住友電工・大阪研究所超電導研究部の大倉健吾氏は「冷凍機直冷型高温超電導マグネットは、使い方は非常に簡単で、安定して高磁場を発生できることがわかってきたので、今後は実際に色々なところで使っていただけるようにしたい」と話している。
写真

(ZYAN)


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