SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 7

ASC社とABB 社が高温超電導変圧器の共同開発を開始

 1995年1月12日ABB社とアメリカンスーパーコンダクター社(ASC)が高温超電導を使った変圧器の開発を行なうと発表した。ABBのプロジェクトマネージャーのDr. Anton Demarmelsはこの技術は今世紀末までには通常の変圧器とコスト面で十分対抗でき、またプロトタイプ機を製造し、利点と技術の信頼性向上を行なうつもりであると語っている。両者は本開発は世界中で年間数十億ドルの高温超電導変圧器の市場を開く第一歩であると考えている。
 本研究には、世界最大の電力会社であるEdF、スイスのジュネーブ電力(SIG)、そしてスイスエネルギー省がサポートを行なっている。1996年後半の完成を目指し、その後ジュネーブの電力系統で試験する予定である。  ABBとASCはまず、630kVA高温超電導変圧器の設計、製作試験を行なう。これはより大きな商業化可能な変圧器へ向けた第一歩である。この変圧器は銅線の代わりに高温超電導体を使用し、小型化と高効率化を目指している。また、液体窒素を冷媒および絶縁体として使用する設計である。ASC社長のDr. Gregry YurekはEdFやSIGなどの大きなユーティリティがABBとともに電力への超電導の導入に努力しており、このプロジェクトはASCにとって中心的な仕事になり、かつ、超電導の商業化を加速するだろうと語っている。このプロジェクトはABBが液体ヘリウム冷却による設計をしていたものの延長上である。 
 ABB社は1988年スウェーデンのAsea社とスイスのBBC社が合弁してできた多国籍総合エネルギー会社で、両者とも100年近くの歴史がある。ABBの電力送配電部門は電力送配電に関して開発、販売、システムサービスなどをてがけ、1993年の売り上げは66億ドル、従業員数43,000人である。ABBグループ全体では売り上げ280億ドル、従業員数206,000人である。アメリカンスーパーコンダクター社は米国、マサチューセッツ州、ウエストバーグを拠点とし、超電導のための開発製造を行なっており、特にフレキシブルな高温超電導ワイヤーの製造に力を入れている。
 日本ではこれまで、三菱と関西電力でニオブスズ3での712kVA、九州大学と東芝がニオブチタンで600kVAクラスの単相ヘリウム冷却変圧器を製作しているが、大型の高温超電導変圧器の製作は行なわれていない。上記プロジェクトでは、通常の変圧器とコスト面で今世紀中に対抗できるところまで開発する予定とのことで、超電導の実用化という点で、また高温超電導体を交流使用すると言う点で非常に進んだ試みである。

(M. N.)


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