超伝導クイズ-上級編 解答&解説


Q1 Bi系が線材として開発が進んだのはなぜ? Ans. 配向させやすいから

Bi系超伝導体は結晶成長速度に対して大きな異方性を有することから配向制御が容易であり、長尺化が可能です。また、2層のBiO面間が弱いファン・デル・ワールス力で結合していることから、圧延などの機械的な応力によりこの面で配向させることが出来ます。

Q2 将来、超伝導を用いた開発が期待されている研究はどれ? Ans. たんぱく質の構造解析

最近、たんぱく質の構造解析などのための高磁場 NMR への需要が高まってきています。例えば 800 MHz 級 の NMR では、 18.8 T という高い磁場が必要であり、この磁場を発生させるために超流動ヘリウム冷却によって超伝導特性を最大限まで高める必要があります。さらに、より特性の高い超伝導物質の開発も不可欠です。

Q3 RE123で超伝導が出現しないと考えられているREは? Ans. Pr

Prの4f軌道とO2Pπとの結合が有限で、その混成軌道がO2Pσから正孔を奪ってしまうためにTcが大きく抑制され、普通に作製した試料では超伝導となりません。ちなみに、Caと共に高圧下で合成を行えば超伝導を示すことが確認されています。

Q4 Bi2212単結晶にPbを置換した効果として、間違っているのは? Ans. 単結晶の大型化

Bi系ではFZ法を用いることにより、良質で大型の単結晶を得ることが出来ますが、Pb置換によるその結晶の大きさの変化は認められていません。ちなみに、他の選択肢に挙げたような超伝導特性の改善には目を見張るものがあリます。

Q5 REBa2Cu3OyにおいてTcを上げるREはどれ? Ans. イオン半径の大きいRE

イオン半径の大きいREが導入されることでCuO2面の平坦度が改善され、高いTcを示すと考えられています。つまり、理論上はイオン半径が最大のNdが最高のTcを示すはずですが、同時に固溶が進みキャリア濃度が低下してしまうため、どの希土類元素が最適かを一概に決定することが出来ないのが現状です。

Q6 La系のブロック層の結晶構造は? Ans. 岩塩型

高温超伝導体の中では比較的単純な構造を有しているということもあり、研究が広く進められています。

Q7 RE系で最も一般的に行われている単結晶育成方法は? Ans. Flux法

別名、静置徐冷法。溶融した原料を炉中で徐々に冷却し、わずかな温度勾配により結晶を析出させる方法。液体部分に結晶よりも融点の低い成分がフラックスとして残ります。全体が冷えて固まったところで比較的大きな板状の結晶粒を拾いだすといったものです。

Q8 酸素不定比性の最も大きい系はどれ? Ans. RE系

REBa2Cu3Oyにおいて、y = 6〜7 と、非常に広い酸素不定比性を示します。他の系ではこれほど大きな酸素不定比性は認められませんが、それでもほんの少し酸素量が変わるだけでその超伝導特性は劇的に変化するため、すべての系において実験上非常に重要視されるパラメターとなっています。

Q9 RE123系の最初の報告におけるREはどれ? Ans.Yb


発見当時は超伝導フィーバーの真っ只中で、新規高温超伝導体探索のスピード勝負でした。そこで、本当はYで初めて超伝導発現を確認したのを、「周囲の研究者の目を欺くために」わざとYbだと報告したという逸話が残っています。だが、この話には後日談があり、Ybでも超伝導を示すことが後に明らかになりました。

Q10 次のうち、最も分子量が大きい物質は? Ans. Bi2212

Bi2212 Bi2Sr2CaCu2O8  888.4
La214  La2CuO4       405.34
Y123   YBa2Cu3O7      666.13
Hg1212 HgBa2CaCu2O6   738.36
Fe1212 FeSr2YCu2O8    487.46

Q11 第2種超伝導体において,磁束を運ぶ最小の単位である量子化磁束。その大きさは何Wb? Ans. 2.07×10-15Wb

第2種超伝導体が混合状態にあるとき、磁束は量子化磁束Φ0=h/2e(h:プランク定数,e電子の素電荷)ずつに分割されます。これを計算して、2.07×10-15Wbとなります。

Q12 超伝導体に侵入した量子化磁束はエネルギーを安定化させるため格子を組むことが知られている。今超伝導体に1Tの磁場をかけた時、量子化磁束が三角格子を組むとすると磁束格子完距離はどのくらいになるか? Ans. 48.9nm

磁束密度がBの場合、単位面積あたりB / Φ0個の数の磁束線が存在することから、磁束線格子間隔afは、単位面積のなかに1辺の長さがafの正三角形がB / Φ0個だけあるということになり、af = 1.075(Φ0/B)1/2で与えられることになり数値を代入して48.9nmを得ます。

Q13 線材として実用化されているBi2223超伝導体はBiサイトをPbで置換している。BiとPbとSrの比が1.8:0.4:1.8である時の分子量の値として最も近いものは次のうちどれか? Ans. 1050

この条件のもとでのBi2223の組成式はBi1.8Pb0.4Sr1.8Ca2.0Cu3.0O10+δである。構成元素の原子量はBi:208.9804 Pb:207.2 Sr:87.62 Ca:40.078 Cu:63.546 O:15.9994
となり、計算すると約1050となります。

Q14 1988年に講談社から「***の超伝導講座」という漫画が出版されました。(***は著者名)著者は次のうち誰でしょう? Ans. 石ノ森章太郎

「石ノ森章太郎の超伝導講座」は仮面ライダーなどで有名な石ノ森章太郎さんが描いた漫画。超伝導の原理、応用、展望、超伝導研究の裏側などが描いてあります。主人公の学生を取り巻く人物(大学関係者)は、名前は変えてあるが実在する人物です。

Q15 超伝導を発見したオンネスは2年間も超伝導電流が減衰しないことを実験で確かめているが、2年で実験を止めた原因はなんでしょう? Ans. 交通スト

電気抵抗がゼロかどうかをを調べるために、リング状の超伝導体に電磁誘導により電流を誘起させ電流が発生する磁場の減衰を調べました。その結果、減衰は全くなく電気抵抗がゼロであることが確認されました。交通ストで液体ヘリウムの供給が途絶えてしまい、超伝導状態を保つことができなかったため2年で実験を停止させなければならなかったのです。

Q16 主人公が、超伝導体が用いられた乗り物に乗って登場する設定のアニメ映画はどれ? Ans. AKIRA

主人公の金田が超伝導モータとコイルでがんがん走る、超伝導バイクを乗り回す.という設定でした。 1988年公開 大友克洋監督。

Q17 超伝導状態が突如壊れる現象。総称してなんという? Ans. クエンチ

quench」という英単語自体の意味は、消失する・消火するといったものです。また(サンプルなどを)急冷する場合にもこの言葉が用いられます。

Q18 s波の対称性を持つ超伝導体の転移温度は少量の磁性不純物によってほとんど変化しません。これはいわゆる何の定理? Ans. アンダーソン

フィリップ・ウォーレン・アンダーソンはアメリカのインディアナポリスに生まれた物理学者で,1943年ハーバード大学を卒業,1949年に同大学から学位を取得しています。1949年から実に28年にわたってベル電話研究所の物理部門に勤務したが,かたわらケンブリッジ大学客員教授を1965〜1975年までつとめました。1975年プリンストン大学教授となり、この間,1952年には,フルブライト交換教授として東京大学で講義しています。固体物理の理論,なかんずく磁性と超伝導に業績を残しており、ロウェルを指導して1963年には直流ジョゼフソン効果を観測し理論的にも解明しました。1977年ノーベル物理学賞を受けた研究は,金属の局在磁気モーメントと非晶質物質の電気伝導の理論であったが,同じく固体理論の恩師ヴァン・ヴレックとモットの3人で賞を分けました。

Q19 超伝導磁気浮上式鉄道(リニアモーターカー)のアイデアを提唱したのは、どこの国の人? Ans. アメリカ

1960年代、アメリカのJ.R.PowellとG.R.Danbyにより提唱されました。非接触で走行するために高速走行に適した特性をもつシステムであり、日本では当時の国鉄で新幹線に変わる低公害の高速な都市間大量旅客輸送システムとして開発が進められました。

Q20 「超伝導」をテーマとしてノーベル賞を受賞したのは、今までに全部で何人
? Ans. 11人

オンネス      1913年 物理学賞受賞 「液体ヘリウムの製造に関する低温現象の研究」
ランダウ     1962年 物理学賞受賞 「凝集状態の物質,特に液体ヘリウムの理論的研究」
バーディーン   1972年 物理学賞受賞 「超伝導現象の理論的解明(BCS理論)」
クーパー     1972年  物理学賞受賞 「超伝導現象の理論的解明(BCS理論)」
シュリーファー  1972年 物理学賞受賞 「超伝導現象の理論的解明(BCS理論)」
江崎玲於奈   1973年 物理学賞受賞 「半導体におけるトンネル効果と超伝導体の実験的発見」
ジエーヴァー  1973年 物理学賞受賞 「半導体におけるトンネル効果と超伝導体の実験的発見」
ジョセフソン   1973年 物理学賞受賞 「ジョゼフソン効果の理論的予測」
アンダーソン  1977年 物理学賞受賞 「磁性体と無秩序系の電子構造の理論的研究」
ベドノルツ    1987年 物理学賞受賞 「酸化物高温超伝導体の発見」
ミューラー    1987年 物理学賞受賞 「酸化物高温超伝導体の発見」
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