超伝導クイズ-超上級編 解答&解説

Q1 日本で初めて製造された超伝導電磁推進船の名前は? Ans. やまと

1992年に三菱重工によって製作されました。用いられている超電導電磁石はNbTi超電導線材で、6対のコイルによって3.5〜4Tの磁場を発生させることが出来ます。

Q2 Bi系酸化物超伝導体を使って実用化が最も近そうなものは? Ans. 電線
 
Bi系酸化物超伝導体は結晶組織の配向制御が容易なことから長尺化が可能であり、線材として広く研究が進められています。

Q3 Y系酸化物超伝導体で実用化が最も近そうなものは? Ans. フライホイール
 
超電導フライホイールとは、超伝導体により磁気浮上させた巨大なコマを夜間の余剰電力で回転させ、電気エネルギーをコマの回転運動エネルギーとして貯蔵するシステム。昼間は、モーターを逆結線して発電機とし電力を供給します。燃料電池など他の電力貯蔵システムに比べて装置体積あたりの貯蔵エネルギー密度が高いこと、また理論上寿命がないことから、人工衛星や電気自動車への応用が期待されています。

Q4 米国のスターウォーズ計画で採用された超伝導体は何処に使われる予定だった? Ans. レールガン
 
スターウォーズ計画とは米国の戦略防衛構想で、冷戦末期の1983年、当時のレーガン大統領によって提唱されたものです。電磁力で物体を高速度に加速する装置を総称して「電磁飛翔体加速装置(EML:Electromagnetic Launcher)」と呼び、電源に繋がれた二本の伝導物質から成るレールの間に可動伝導体(弾丸)を挟み、そこへ電流を環流させる際に「フレミングの左手」則に従って起こる作用によって伝導体(弾丸)を加速・射出するEMLをレールガンと云います。発電能力がレールガンの初速を左右するのですが、供給される電力が大きくなると、弾体が伝導体であることに問題が生じてくるのです。すなわち、メガジュール・ギガジュール級以上のエネルギーが流れ込むことで、電気抵抗がもたらす熱で弾体が気化、果てはプラズマ化してしまいます。この問題点を解決するべく超伝導体が採用されたわけですが、予算の関係で打ち切りになったとか…

Q5 ノーベル賞を受賞した日本人の中で、その受賞テーマに「超伝導」が含まれるのは誰? Ans. 江崎玲於奈

湯川秀樹   1949年  物理学賞受賞 「核力の理論による中間子存在の予言」
朝永振一郎  1965年  物理学賞受賞 「量子電気力学の分野における基礎的研究」
江崎玲於奈  1973年  物理学賞受賞 「半導体におけるトンネル効果と超伝導体の実験的発見」
白川英樹    2000年  化学賞受賞   「導電性ポリマーの発見と開発」
野依良治    2001年  化学賞受賞   「触媒による不斉合成(Catalytic asymmetric synthesis)」

Q6 垂直離着陸機(VTOL)は何の力で垂直浮上する? Ans. ジェットエンジン

垂直離着陸機とはヘリコプターなどの滑走路を必要としない機体のことですが、今のところ超伝導体は使用されていません。省スペースを生かした乗り物ということで開発が広く期待されています。

Q7 ただ冷やしただけの超伝導体に磁石をくっつけようとするとどうなる? Ans. いやがる

マイスナー状態にあるわけですから、磁場を排除しようと働きます。

Q8 液体ヘリウムの特徴として正しいのはどれ? Ans. 超流動

超流動は1932年、液体ヘリウム(4He)の2.18Kにおける比熱の異常増大現象(λ転移)から発見されました。超流動とは、液体の粘性抵抗が消失した状態です。λ転移によって、相転移した液体ヘリウム(He・)は超流動状態であり、ビーカーに入れておくと壁をよじ登って、勝手に漏れだしたり、普通の液体では決して通れないような、どんな狭い隙間からも流れ出るといった、「とにかくサラサラした」状態になります。この原因は、4He原子がボーズ粒子であるという点にあります。極低温にあると、クーパー・ペア同様に4He原子は基底状態に集中し、エネルギー損失のない(->引っかかりのない)集団運動を起こすわけです。

Q9 超伝導磁石(10T)は棒磁石の何倍の強さ? Ans. 100〜1000倍

一般的な棒磁石の強さは数百ガウスくらいです。ということで、100〜1000倍となります。ちなみに、肩こりなどに効くピップエレキバンは1000ガウス程度。結構強い磁力を持っているんです。

Q10 液体ヘリウムを作る時に使う効果(物理効果)は? Ans. ジュール・トムソン効果

エンタルピーが一定の条件で圧力の変化に伴う温度変化について、理想気体ではある温度(逆転温度)以下では断熱膨張により冷却効果が得られます。ジュール・トムソン膨張は不可逆過程であり効率は悪いが、可動機械要素を必要としないため多くの液化システムに利用されています。

Q11 次のうち磁石に近づけてはいけないものはどれ? Ans. 電車の切符

自動改札機に通す切符の裏面には磁気記録が行われ、この情報をもとに改札の扉を開けるかどうかの判断を行う仕組みになっています。磁性印刷物ですから、磁石を近づけるのは厳禁というわけです。

Q12 強い磁石を近づけてもくっつかないのはどれ? Ans. 5円玉

磁石にくっつく金属は鉄やニッケルなど、限られた金属だけです。アルミや銅にはつきません。硬貨はさまざまな金属でできています。1円玉はアルミ、5円玉は銅と亜鉛、10円玉は銅と亜鉛と錫(すず)でできいるのでくっつきません。ほかの硬貨もつきにくい合金でできています。ちなみに、50、100、500円玉はわずかにニッケルを含んでいるため、超強力な磁石を近づければくっつきます。また、印刷に用いているインクにわずかに磁性物質が含まれているため、紙幣は全種類磁石にくっつきます。

Q13 国立天文台の電波望遠鏡に用いられている超伝導素子の物質は? Ans. Nb

従来の半導体を用いた可視光の検出装置では、電波のエネルギーが小さいので電波を検出できない。波長1nmの電波のエネルギーは〜1022Jで超伝導のギャップと同程度の大きさであり、電波天文学に適している。用いられているのは、(Nb/AlOx/Nb)のSIS結合によるミリ波ミキサーであり、従来の半導体(ガリウムヒ素)ダイオードによるそれと比べて変換効率が高く、自己雑音が非常に少ないといった特徴を持っています。

Q14 超伝導が応用されている技術。間違っているのはどれ? Ans. テレビ

現在のところ、超伝導テレビといったものは開発されていません。 

Q15 現在、最強の磁石はどれ? Ans. NdFeB

現在市場に流通している磁石の中では、最高の磁気特性を持っており、機械的強度にも優れています。サマリウムコバルト磁石よりも安価なところも大きな長所と言えます。 機械加工により、用途に合わせた形状の製作も比較的容易で試作等にも向いています。問題点としては、温度特性が低いことがあげられます。通常品では80℃未満が、使用条件となります。もう一つ、さび易い欠点があり通常はNiメッキ等の表面処理がなされています。

Q16 パソコン周辺機器で強い磁石をくっつけても安全なのは? Ans. CD

CDのデータは、小さな突起(ピット: pit)の集まりとして記録されており、このピットを読み取るのに直径 1.6μm程度に小さく絞られたレーザ光を用い、反射光の強さを読み取ります。ピットが無い所に入射した光は、そのまま反射して全光量がレンズに戻ってくるのに対して、ピットのある所に入射した光は、回折・干渉の結果、大部分がレンズの外側に散乱し、レンズに戻ってくる光の量が減少するといった仕組みです。磁場応答は関係していないので、CDが正解となります。

Q17 銅酸化物高温超伝導体は何に弱い? Ans. 湿気

銅酸化物高温超伝導体はアルカリ性の高い、湿分を吸い易いイオンを含むため、湿気の高い場所に放置するとすぐに劣化してしまいます。しかし、水分子を含んだ初めての高温超伝導物(H,C)mBaCaCuOyを合成し,その構造評価に初めて成功したという例も報告されています。それまで,水は高温超伝導を壊すものと考えられていましたが,水を含んでも90Kの転移温度を示す物質があることはそれまでの常識を覆しました。
 
Q18 次の金属元素のうち単価が最も高いのはどれ? Ans. ロジウム

金属単体の相場は変動するので一概には言えないのですが、1gあたり金1,200円 白金2,500円なのに対し、Rhはなんと10,000円!! 使用するときには緊張しますね…

Q19 では液体1リットルあたり最も安いのはどれ? Ans. 液体窒素

 
窒素は大気中に無尽蔵にあるわけで、1Lあたり100円程度しかかかりません。かなり安いです。だからこそ、液体窒素温度(77 K)以上のTcを持つ高温超伝導体のメリットがあるわけですね。ちなみに、液体ヘリウムは1Lあたり1000円以上します。実に10倍以上ですね。

Q20 最後の質問です。科学未来館の館長、毛利衛さんが乗ったスペースシャトルの名前は? Ans. エンデバー
 
毛利さんは1992年にSTS-47号機、2001年にSTS-99号機と2回エンデバー号に搭乗しています。

クイズトップへ