超伝導転移温度(Tc)の推移

超伝導は1911年にオランダのカマリン・オンネスによって発見されました。 オンネスはそれまでに誰も成功しなかったヘリウムの液体化を達成(1908年)していました。また当時絶対温度ゼロK(-273.15℃)まで温度を下げていったとき金属の電気抵抗がどのようになるかが論争になっていました。オンネスは液体 ヘリウムを用いて水銀を冷やしていったところ4.2Kで電気抵抗がゼロ になることを発見したのです。

図1に超伝導転移温度(Tc)の 推移を歴史年表にまとめてみたものを示します。1911年にオン ネスによって、水銀が超伝導体になることが発見された後、 単体金属だけではなく、合金、酸化物、有機物など、さまざまな物質 が超伝導体になることがわかり、超伝導とは特別な状態ではな いことが明らかになりました。しかし1986年以前に発見された超伝導体のTcは20Kに満たない非常に低いものでした。

ところが、1986年にスイスのベドノルツとミュラーはTcが30Kを超える La-Ba-Cu-O超伝導体を発見しました。翌年には、液体窒素温度 77Kを超えるY系超伝導体も発見されTcはこれまでにない飛躍的 な上昇を見せ、世界中を巻き込んだ大フィーバーとなりました。 図1に示されるようにその後BiSrCaCuO、TlCaBaCuO、HgCaBaCuOと、次々にTcの最高記録の更新が続きました。

今世紀2001年のはじめには銅酸化物 以外でTcが30Kを超える物質も報告されました。 青山学院大学の秋光純教授のグループにより39KのMgB2超伝導体が発見され、さらに新たな物質探索の可能性が示唆されました。

(また、米国ルーセントテクノロジー・ベル研究所のシェ−ン氏はC60 にCHBr3をインターカレーションし、FET構造を用いてホールを ドープすることによりTc=117Kが実現すると報告しました。大きな反響を呼んで いますが、残念ながらまだ誰もその確認に成功していません。)

電気抵抗ゼロと超伝導体の臨界値

超伝導体のもっとも基本的な特性は電気抵抗がゼロになることです。抵抗が無ければいくらでも電流を流せるかというと、実はそれには限界があるのです。これは臨界電流と呼ばれ超伝導体の実用化を考える時にはたいへん重要な目安となる値です。

超伝導には臨界電流だけではなく臨界磁場というものも存在します。ある一定以上の磁場をかけると超伝導体はゼロ抵抗を保てなくなってしまう、すなわち超伝導状態が壊れてしまうのです。

このように超伝導状態を保持するためには温度、電流、磁場のそれぞれに限界値があるので、これらすべてに大きいことが超伝導を有効利用するためには必要となります。さらにこのような基礎特性だけではなく、加工がしやすいか、安い値段で作ることが出来るか、 環境に配慮したものであるか、など、本当に世の中に普及するためには様々な条件をクリアする必要があります。

国内外の研究者の大きな協力により、現在これらの条件を課題に、超伝導体の実用化が着実に進んでいます。



完全反磁性(マイスナー効果)

超伝導体の基本的な特性として臨界温度(Tc)を境として電気抵抗がゼロになることはこれまで述べました。さらに超伝 導体について覚えておきたい重要な性質があります。それが完全反磁性(マイスナー効果)と呼ばれるものです。

ではマイスナー効果とはどのようなものなのでしょうか。図2は完全反磁性と完全導電性の違いを比較したものです。

まず、(a)→(b)のように超伝導体を冷却した後、磁場をかける場合について見てみます。電磁誘導により外部から加えられた磁場 を打ち消す方向、言い換えると磁場の侵入を妨げる向きに電流が誘起されます。超伝導体は電気抵抗がゼロであるので、 いったん誘起された電流は流れ続けます。ここまでは、超伝導体の電気抵抗ゼロという性質により起こる現象なので超 伝導体は完全導体であるとしても説明することができます。

では(c)→(d)のように高温で磁場を印加し、そのままの状態で冷却し、超伝導状態にした後に外部磁場を取り去った 場合に何が起きるでしょうか?超伝導体が完全導体の性質しか持たな いとすれば、電磁誘導の法則に従い、磁場が外部に出て行くのを妨げる向きに誘導電流が流れるので磁場を補足した状 態が得られるはずです。しかし、実際は超伝導状態になったとたん磁場は超伝導体の外に排除される。つまり、最初の 状態(初期状態)に関係なく磁場を排除するのです。このような性質は完全導体では説明できず、超伝導体は完全反磁性であるこ とが明らかになったのです。




超伝導体の種類 −第一種超伝導体、第二種超伝導体−

超伝導体はマイスナー効果により完全に磁場を排除することが出来ることを述べました。しかしながら印加する磁場が大き くななると、超伝導状態でいることがエネルギー的に不安定となり、ついには超伝導が壊れてしまいます。このときの磁場を臨界磁場(Hc)と呼びます。、超伝導はHcまでは超伝導を示すが、それ以上の磁場では常伝導になってしまうのです。

ところが、1957年、ロシアのアブリコソフにより、全く異なる磁気的性質を示す超伝導体の存在が予言され、程なく実存が確かめられま した。従来の超伝導体は第一種超伝導体と呼ばれ、アブリコソフが予言した超伝導体は第二種超伝導体と呼ばれます。

では第一種と第二種違いはどのようなものなのでしょうか。図3に第一種超伝導体(a)と第二種超伝導体(b)の違いについてまとめたものを示 します。

第一種超伝導体はHcまで完全反磁性を示し、Hcに達した時点で常伝導状態に転移します。

一方、第二種超伝導体は低磁場では第一種と同様に完全反磁性を示すものの、 Hcよりも低い磁場で超伝導体内に磁場が侵入します。このときの磁場を下部臨界磁場として Hc1で表します。Hc1よりさらに磁場を大きくしていく と超伝導体内に侵入する磁場も増えていきます。超伝導体がすべて磁場で埋め尽くされた時、常伝導に転移します。この磁場は 上部臨界磁場と呼ばれます。





高温超伝導体

現在高温超伝導体と呼ばれているのは1986年にベドノルツとミュラーによって発見されたLa-Ba-Cu-Oを代表とする銅酸化物群のことです。その発見が刺激になり、高温超伝導探索が世界中で行われ、数多くの物質が発見されまし た。 なお、彼ら二人は1987年にノーベル物理学賞に輝きました。発見から受賞までのわずか1年という最短期間記録です。

また高温超伝導体の基本結晶構造は共通であることが、わかってきました。これらはすべて共通にCuO2面を有し、またブロック層と呼ばれる電荷の供給層が交互に積み重なった構造をしています。図4に代表的な結晶構造を示します。




超伝導体の応用

超伝導は物理、化学、材料学を基礎として、様々な分野への応用が考えられています。図5には超伝導体が応用される広範な分野を模式的に表した図です。

超伝導が使われているので有名なのは、時速500キロで走るリニアモーターカー(磁気浮上列車)や、病院で使われている人体の断面図を見ることのできる磁気共鳴イメージング(MRI)などです。その他にも、輸送や医療の分野で電磁推進船、脳波図測定装置など、様々な応用が期待されます。

また、超伝導は近年、天然資源の枯渇などで問題になっているエネルギーの分野で省エネルギーを実現するものとして期待されるとともに、今や我々の社会に欠かすことのできない情報システムの分野においても利用されています。 超伝導の応用は広い分野にまたがっており、我々の生活に欠かすことの出来ないものになるでしょう。