SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.5, Dec. 1996, Article 4

マグレブ用高温超電導体パワーリードを開発 〜 鉄道総研・住友電工

 (財)鉄道総合技術研究所は住友電気工業(株)と共同で、超電導磁気浮上式鉄道(マグレブ)の超電導マグネット用電流リードのプロトタイプを開発した。
 マグレブ用超電導マグネットは永久電流モードで運転されるが、励磁、消磁時には、電流リードに通電する必要があり、侵入熱を低減するためヘリウムガスを流してリードを冷却している。その際の発生熱は、車載冷凍器の外乱になっていた。また電流リード自体も定常的熱侵入量を大きくしている要因であり、液体ヘリウム消費量の増大につながっていた。
 一方、高温超電導体は熱伝導率が小さく、高い温度まで電気抵抗ゼロの超電導状態を保持できるため、電流リードとして理想的な材料であると考えられている。今回開発した電流リードは、Ag-10at%Au合金シースのBi2223多芯高温超電導線材を11枚積層し、エポキシ樹脂で絶縁含侵し周囲をFRPにより成型したもの。高温端を液体窒素定点とし、低温端をNbTi線で短絡した単体試験では、ヘリウムガスによる冷却無しの伝導冷却のみで、無通電時0.25W/対、600A通電時0.33W/対と従来の銅合金電流リードと比較して侵入熱が半減した。
 また、実際のマグレブ用超電導コイルと組み合わせた試験では、以下の結果が得られた。(1)永久電流スイッチをON状態にした600Aまでの通電でリードの電圧発生や温度上昇はなかった。(2)超電導コイルの励磁・消磁については起磁力800kA(571A通電)まで異常無く実施でき、その際の液体ヘリウム蒸発量も従来の銅合金リードに比べ半分以下であった。(3)永久電流状態から人為的に永久電流スイッチをOFFにする強制消磁試験を4回、コイル電流の減衰速度を早めたコイルクエンチ誘発試験を3回実施したが、電流リードの超電導性が破れることなく実施できた。
 (財)鉄道総合技術研究所の鈴木栄司研究室長は「高温超電導体の電流リードとしての有用性が確認できた。今後は、実際のマグレブ用超電導コイルの形状に即した電流リードを開発し、耐振動特性を含めた長期信頼性を検証する必要がある」とコメントしている。

(K.H)


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