SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.5, No.4, Oct. 1996, Article 1

新方式のスイカ非破壊検査装置を開発 〜 神戸製鋼所、ジャパンマグネットテクノロジー、マキ製作所

 (株)神戸製鋼所・電子技術研究所(本社・神戸市)、ジャパンマグネットテクノロジー(本社・神戸市)は大手果実選別機メーカーの(株)マキ製作所(本社・浜松市)と共同でスイカの空洞の有無と糖度を非破壊、非接触により高速かつ高精度で検査できる装置を世界で初めて開発することに成功した。
 これまで、農協などの大規模な選果場では、スイカの空洞の有無は主に熟練者が手で叩いて判断するか、あるいはプラスチック振子でスイカ表面を叩き、その反響音を測定して分析する方法で判断していた。ところが、こうした方法ではどうしてもスイカに接触するため、スイカが割れるなどのトラブルが起こっていた。また、測定の際には搬送用のコンベアを停止する必要があるため、測定に時間がかかっていた。さらに、糖度に関してはこれまで非破壊で測定する手段が全くなかったため、スイカを割って内部の果汁を絞って調べていたのが実状である。
 神戸製鋼所などが今回開発した装置は、超電導マグネットと磁気共鳴とを用いてこうした課題を解決し、空洞の検出と非破壊糖度測定の両方を可能にしたものである。
 この装置の原理は本質的には医療用のMRIと同じである。MRIで空洞が検出できるのは当然であるが、ラインに適用可能な高速検査手法を実現した点に特長がある。例えばMRI断面像撮影には通常分単位の時間がかかるのに対し、今回開発された方式では、コンベアを動かしながら取得した一次元信号強度プロファイルを解析するため、測定速度も1個あたり1秒となり、従来のプラスチックハンマーでスイカを叩いて空洞を測定する方式よりも約4倍もアップしている。さらに、糖度も測ることができる点が最も大きな特長である(糖度の測定速度は1個あたり6秒)。また、従来不可能であった過熟果も判定できる。よりおいしいものを求める消費者ニーズともマッチして、今後大きな延びが期待される。
 果実糖度の非破壊測定は農業分野における最先端の研究テーマである。国際競争にさらされるようになった国内農家の競争力アップに欠かせない。これまでに赤外線を用いて糖度を測る方法がリンゴやナシ、モモ等ですでに実用化されているが、外皮の厚いスイカなどの果実に適用することは不可能であった。また、赤外線方式では、光の透過、散乱経路の平均的な糖度しか求まらないため、任意の部位の糖度を測定できる新たな方式の開発が待たれていた。今回、神戸製鋼所などは本装置で初めて、果実内部の任意の部位の糖度を非破壊で測定することを可能にした。
 装置は、今後大規模選果場に設置され、自動化された選別ラインに組み込まれて使用される見込である。神戸製鋼所等では、本装置に関する問い合わせや取材が相次ぎ、スイカ以外の様々な果実・食品の内部品質非破壊検査への適用をめざして用途開発を進めていく計画である。
問い合わせ先:651-22 神戸市西区高塚台1-5-5 (株)神戸製鋼所 電子技術研究所 三木、斉藤、林、嶋田、川手 電話:078-992-5652 ファックス:078-992-5650

写真:スイカ検査装置

図:本装置によるスイカ糖度予測値と糖度実測値との関係

(melon)


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