SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.4, No.1, Feb. 1996, Article 2

ISTEC 第 II フェーズ計画の検討始まる

 通産省工業技術院は(財)国際超電導産業技術センター(ISTEC)が設立後8年目を迎え、当初の予定期間である10年間のプロジェクト期間終了を間近に控えていることから、ISTEC の将来計画の検討に入った。通産省 としては今後1年程度の各種委員会による検討を経て、報告書をまとめ、具体的な提案を行う予定である。また、これに呼応する形で、民間組織として超電導懇談会が設置され、そのもとにワーキンググループが設けられて、民間サイドからの意見を集約している。関連者らの話を総合すると、同センターの役割は世界的にもユニークで、通産省の始めた大型プロジェクトとしては諸外国の評判も良く、また、通産省大型プロジェクトの目的に沿う、未来の新産業創成の可能性を持つ precompetitive なフェーズにある大型分野であることから、今後、第 II フェーズ計画が認められていくことは確実と見られているようだ。
 本プロジェクトは通産省の産業科学技術研究開発制度の中に位置付けられているが、これは昭和41年度に発足したシステム・プラント開発を中心とした大型工業技術研究開発(大プロ)制度と、昭和56年に発足した基礎的な要素技術を中心とする次世代産業基盤技術研究開発(次世代プロ)制度、および、昭和51年以来の医療福祉機器技術研究開発制度の3者が統合され、平成5年度よりスタートしたもの。このように通産省のR&D 制度が一本化された背景には、わが国の政府 R&D プロジェクトに対する諸外国からの強い批判があったことは否めない。すなわち、それまでのプロジェクトがすでに立ち上がった産業や立ち上がることの明らかな産業育成のために使われているとして、「MITI (通産省)Project の脅威」として諸外国に映ったことを反省してのものである。このために最近のプロジェクトは ISTEC を含め、新規産業としての可能性を秘めつつも、まだ、先行きの不透明さを残す precompetitive な分野が重点的に選ばれて来ている。また、プロジェクトの国際的開放性も意識され、海外への活動内容の開放だけでなく、むしろ、積極的な働き掛けが推奨されている。
 ISTEC のこれまでの活動を見ると、国際会議の主催などによる積極的な情報公開と情報発信、海外諸研究機関との共同研究の実施、また、海外メンバーの勧誘などプロジェクトの国際開放、さらには、G7 サミットを思わせる超電導サミットの提唱とその中心的運営、集中研へのポスドクの大量採用など、MITI Project に次々と新しい風を送り込んで来ている。海外から「通産省の企図した新しい国家プロジェクトの試金石」といわれるのは、このような ISTEC の諸活動に基づく。しかしながら、バブル崩壊後の我が国企業が当面の市場化につながらない長期的視野の必要な基礎研究を縮小し始めていることから、通産省としても国家プロジェクトに対する企業の本音を打診する必要性を生じていることも事実である。したがって、検討期間内には参加企業からの意向を汲んで、集中研究所としての超電導工学研究所における、これまでの基礎研究を中心とした取組に加えて、これまでの研究の成果を基にprecompetitive ではあるが、よりはっきりとしたターゲットを設定した研究グループの発足を望む声もあるようだ。
 ISTEC はこのような動きに合わせて、我が国企業の超電導研究開発動向のアンケート調査や昨年12月には海外研究開発動向の大型調査団の派遣などを行い、今後の検討プロセスへの資料を作成し、また、ISTEC 内部に「2010年」委員会を設置して、将来予測と大型応用技術のフィージビリティスタディを行っている。

(飯山)


続報
ISTEC フェーズ II 計画を工技院に提出(Vol.5, No.5)

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