SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, No.4, Vol.1, Feb.1995, Article 9

超電導フライホイールの開発進む

 YBCO系のバルク材を用いた応用が、日本、米国、ヨーロッパで活発化しているが、その中でエネルギー貯蔵用の超電導フライホイールのプロジェクトが本格化してきている。
 フライホイールによるエネルギー貯蔵の原理は簡単であり、円盤を回転させて運動エネルギーのかたちで貯蔵するものである。エネルギーの出し入れも容易であり、応答性も良く、過密な都市部での分散設置も可能であるため、従来から注目を集めていた。しかし、機械式のベアリングを使う限り、回転部の摩擦のために長時間の貯蔵が不可能であった。このため、その簡便さの割にはあまり普及していないのが現状である。
超電導バルク材料と磁石を組み合わせた磁気ベアリングを用いると、原理的には回転ロスがゼロとできるため、この問題は解決できる。よって比較的長時間の貯蔵が可能となるのであるが、超電導ベアリングでも、回転磁石の磁場が不均一であると、ACロスが発生する。これをいかに低減するかが超電導フライホイールの課題であった。
 最近、ドイツのカールスルーエ研究所のボーマン博士らは開発の焦点である摩擦係数を0.0000000016まで減らすことに成功したと発表した。これは貯蔵エネルギーが1時間でわずか0.0036%しか減少しないことに対応する。半減期は2年である。今回の実験では、2.3kgのフライホイールを10-4Torrの真空中で、25000rpmの速度で回転させている。1995年には、10kgのローターを50000rpmの速度で回転させ、300Whの容量の超電導フライホイールの製造を計画している。
 一方、米国のアルゴンヌ国立研究所は、1998年に2MWh の容量の超電導フライホイールを完成させるプロジェクトを開始している。ただし100KWh機を20台でこの容量を達成する計画である。台数を増やせば、1台のみを停止させての保守点検が可能であるうえ、万が一の事故の場合でも対応が容易である。

(田町MM)


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