SUPERCONDUCTIVITY COMMUNICATIONS, Vol.17, No.3, JUNE. 2008

9.《低温工学・超電導学会会議報告 5/26-28 明星大学》


1.システム応用

システム応用に関連する発表としては1日目に「電力機器」、「ITER」、「コイル技術」、「超電導応用」、「電力応用」、「JT-60SA《、「マグネット技術《、2日目に「磁気分離」、「超電導応用」、「コイル技術」、「電力応用」、3日目に「LHD」、「加速器/NMR」、「送電ケーブル」があった。高温超電導材料別の研究発表は、Bi系に関するものが12件、RE系が24件、MgB2が3件となっており、2007年春季と似た傾向であった。これらの中で筆者が聴講した「磁気分離」、「超電導応用」、「電力応用」、「電力機器」、「冷却冷凍/計測」の各セッションの概要について、以下に報告する。

「磁気分離」のセッションでは、阪大の方らや宇大の酒井らにより、工業廃水、汚泥に凝集剤とマグネタイトを添加し、高速処理のためバルク体磁石による処理試験結果などの報告があった。磁気分離については、渡辺エネルギー環境研究所の渡辺による特別講演や「超電導応用」セッションにおいてもいくつかの報告が見られ、環境保護に対する超電導の応用例として関心の高まりが見られた。

「超電導応用」のセッションでは、新潟大の金山らをはじめとした磁気分離の報告の他、鉄道総研の脇らは浮上式鉄道用超電導磁石の機械加振による耐久性検証について報告した。日立の佐保らは、移動性を考慮しバルク体を用いた携帯型超電導磁石の開発を報告し、着磁特性の向上と自動車による運搬性能を確認している。新潟大の今井らは3 T超の超電導バルク磁石による永久磁石着磁向上について、東北大の玉城らは高温超電導バルク体と永久磁石の組み合わせによる浮上力を利用した免震システムについて報告した。

「電力応用」のセッションでは、京大の中村は、常電導状態でも回転状態を維持でき、超電導状態になると能力が桁違いに向上するというコンセプトの、誘導/同期回転が可能な超電導電動機等に関する報告をした。鉄道総研の尾作は、永久磁石による回転体の磁場勾配を高温超電導バルク体で非接触支持し、8000 rpmまでの高速回転の確認結果について報告した。鉄道総研の清野らは、高温超電導バルク体と超電導コイルを組み合わせた磁気軸受により5 kN、3000 rpmまでの試験結果について報告した。KEKの平林らは水素を二次エネルギーとして利用した場合の効率を電気と比較試算した結果について報告した。日立の沖津らは100 MW系統安定化のためのSMES用HTSコイルシステムの概念設計について、東大の鈴木らはRE系バルク超電導体を適用した同期モータの解析について、九大の中村らは高温超電導材を考慮した転位のある並列導体の交流搊失の解析等について報告した。京大の新居らは設計裕度を持たせたHTS限流器の原理確認結果について、東芝の高橋らは6.6 kV超電導限流器の短絡試験等の結果について、東大の野中らは金保護膜により高電圧化を可能にする限流素子の動作検証結果について報告した。超電導限流器については「電力機器」セッションにおいても報告が見られ、近年報告事例が増加している。 「電力機器」のセッションでは、東芝の矢澤らと小柳らが2件の超電導限流器の報告をした他、九大の東川らは、YBCO線材を用いたSMESコイルで適用している最適化設計手法について、東電の徳永らは超電導変圧器の励磁突入電流解析の結果について、早大の椊田らは高温超電導線材の放射化実験について報告した。

「冷却冷凍/計測」のセッションでは、冷凍冷却の解析として、鉄道総研の池田らはHTS変圧器の冷却を考慮した1 kW級窒素冷凍機用に熱量容量を向上させた熱交換器について報告し、試験により解析の妥当性を確認した。NIFSの前川らは10 kW級ヘリウム冷凍機に対しダイナミックシミュレーションを行って、冷却過程から制御方式の検証を行った結果について報告した。計測では、日立の青木らはコイルクエンチの原因となる機械的擾乱に伴って発生するAE(音響放射)を、熱侵入の少ないサーチコイルで検出した実験結果について報告し、擾乱発生位置評定の見通しを得たとしている。AE検出については、「コイル検出」セッションで岡山大の七戸らによる超電導巻線局所温度上昇検知の報告や、「LHD」セッションで成蹊大の石郷岡らによる、LHDコイルの励磁状態をAEにより推定し最適励磁パターンを提案した報告もあった。また、鉄道総研の宮崎らは高感度センサーであるSQUIDにより、レール亀裂の前兆となる硬化層を捕らえる見込みを得たと報告している。

 (鉄道総研:田中 芳親)

2. Bi系線材

Bi系線材セッションでは8件の発表があり、材料としては、Bi2212が1件、Bi2223が7件で、研究内容としては機械特性が3件、交流特性が3件、臨界電流特性が2件であった。

機械特性:京都大学の大澤らは、SUSまたはBrassで補強したDI-BSCCO線材はともに、弾性率、99%上可逆Icひずみともにラミネートが無い線材に比べて高いこと、また、残留応力解析より、補強材のラミネート処理によりBi2223フィラメントの破断ひずみが増大することを報告した。住友電工の長部らは、厚さ50 mの銅合金をラミネートしたDI-BSCCO線材の機械特性について、許容引張応力、許容曲げ径ともに、SUS(厚さ20 m)補強線と同等の強度が実現し、さらにSUS補強線に比べ接続抵抗が1/3に低減することを報告した。神戸製鋼の長谷らは、SUS補強およびBrass補強DI-BSCCO線材の4.2 Kにおける30 TまでのIc-B特性を報告した。

臨界電流特性:東大の滝本らはSrサイトにNd, Pr, Laを希薄ドープしたBi(Pb)2223焼結体のJc-B特性を調べ、REドープによりJc, Hirrの改善が見られ、特に添加量が0.5%程度の時に最も効果が顕著に表れることを報告した。これら特性向上の原因として、RE置換領域が有効なピンニングセンターとして作用している可能性を指摘している。

交流特性:豊橋技科大の中村らは金属内部酸化法によりNiOを形成したバリア線材を作製し、バリア層導入によりBi2223相の生成速度は低下するが、前駆体へのBi2223相粉末の添加により生成速度は向上しJcも高くなることを示した。豊橋技科大の來原らはツイスト加工がAg-Cu合金シースBi2223テープのJc特性に及ぼす影響を調べ、ツイストを施すとIcが低下し、ツイストピッチを短くするほど大きく低下することを報告した。Ic低下についてはツイストによる配向性の低下、c軸ミスアライメントの増大に起因していると考察された。九州大学の笹重らはツイストピッチが交流特性に及ぼす影響を調べ、ツイストピッチが短くなるほど搊失が減少し、交流搊失の周波数依存性から結合時定数を算出した結果、搊失の周波数依存性は、多芯線の結合搊失と同様にツイストにより抑制されていることを示した。

Bi2212線材:NIMSの高橋らは、酸素分圧を緩やかに上昇させる定温溶融凝固法で作製したBi2212線材について、48時間かけて酸素分圧を変えた線材では内部の上均一性が改善し、Jc特性が向上することを報告した。

 (住友電工:長部 吾郎)

3. RE123線材

RE123線材関連を中心に、主な発表をセッションごとに報告する。

バルク/線材:電力機器応用における交流搊失低減を目指した線材の細線化に関する発表が2件あった。住友電工の種子田らは配向金属基板線材を10 mm幅から4 mm幅、2 mm幅に切断加工した線材特性について報告し、2 mm幅、20 m級線材を作製し、線材長が長くなっても短尺線材と同等のIcが維持されることを示した。SRLの須藤らは50 m長までのIBAD-PLD線材をレーザースクライビングにより5 mm幅を5分割し、加工前Icに対する加工後総Icの割合が8割以上であることを示した。配向金属基板線材、IBAD線材ともに長尺線材においても細線化加工が着実に進んでいる様子が伺えた。

臨界電流(1):昭和電線の高橋、兼子ら(MOD線材セッションで発表)はYBCO(TFA-MOD)/CeO2 (RFスパッタ) /Ce-Zr-O(MOD)/Ni-3 at%Wの50 m長線材でNi-W基板の圧延工程の改良と清浄処理を施すことにより基板の表面粗さRa @ 100 m角を従来の27 nmから20 nmへの低減を進め、その結果、77 K、end-to-endのIc = 208 A/cm(1.5 m厚)の特性を実現した。シンプルな構造、安価な製法で中間層、超電導層ともに長尺化を前進させたことは注目に値する。

ピンニング特性/人工ピン:電中研の一瀬ら、九工大のメレらはYBCOに添加したBaSnO3(BSO)および BaZrO3(BZO)のナノロッド構造の直線性、ピン止め特性について報告した。BZOは基板から成長するに従い柱状構造が曲がっていき、面内では花火のように広がるのに対し、BSOは直線的に成長するためピン力が強く、77 K、B // cで28.3 GN/m3とBZOの約2倊の特性が示された。

配向基板線材:鹿児島大の土井らは配向Cuテープについて報告した。Cu上のNiめっき層は0.5~1 μm厚で = 4.5 °、 = 5.3 °、表面粗さRms = 5~7 nm @ 10~25 m角と良好で、さらにYBCO/CeO2/YSZ/CeO2を積層し、77 K、Jc = 4.5 MA/cm2の特性を得ていた。Niめっき厚が0.5 μmの場合、中間層、超電導層成膜時、および追加の短時間熱処理によりNiがCu中に拡散し、磁性が常磁性まで下がることを示した。住友電工の太田、新海らは低磁性の配向クラッド基板上で、中間層・超電導層成膜搬送速度をそれぞれ20 m/h、4 m/hに高速化。Gd-123の短尺で308 A/cm、12 m長end-to-endで205 A/cmのIcを得たことを報告した。

MOD線材:SRLの市川らはTFA-MOD溶液のBa以外をフッ素フリー化し、仮焼の熱処理が上十分な低Jc試料の断面観察で炭素が未脱な領域が見られたため、塗布膜厚を0.25 m/コートに抑えることでJc = 1.5 MA/cm2を得ていた。同、三浦らはReel-To-Reel法でのTFA-MOD高速成膜について、炉内でのガスの流れを膜に平行から垂直方向に変え、マルチターン化する、結晶成長速度を上げるため、ガス流量を上げる、全圧を下げる、水蒸気分圧を上げる等の最適化を行い、成膜速度を従来比6倊(搬送速度3.3 m/h)とし、5 m長end-to-endでIc = 250 A/cmを得たことを報告した。結晶成長速度に関わる要因を整理し、定式化しており、理詰めでスケールアップを着実に進めた印象を持った。住友電工・本田はフッ素フリーMOD法でYBCO(0.3 m厚)/CeO2/ YSZ/ CeO2/ Ni合金でIc = 73 A/cmを報告した。

IBAD-MgO線材:SRLから4件の報告があった。まず宮田らはIBAD-MgO開発におけるIBAD-MgO層以外の要因についてコメントした。金属基板は表面平滑性が重要であり、Ra = 4.6→2.1 nmとすることでCeO2キャップ層の面内配向性は = 8→4 °と向上し、バリア層は金属基板から超電導層への元素拡散を防ぐ以外に、金属基板を酸化から守る視点も必要と述べた。吉積らはIBAD-MgO層の成膜前に十分真空引きすることにより、チャンバー内の水蒸気を減らすことが重要と指摘した。福島らはIBAD-MgO上でもPLD-CeO2の自己配向現象が起こるが、MgO上にはLaMnO3(LMO)が必要であること、CeO2の自己配向にはLMOの格子定数・膜厚依存性があり、28 nm厚が最適であることを報告し、DCリアクティブスパッタにより150 m/hでIBAD-MgO層を成膜していた。衣斐らはPLD法でBa-poorターゲットを使用し、GdBCO超電導層を厚膜化。Ic-膜厚の関係を調査すると、整数比のBa組成 = 2では膜厚が1 m程度でIcがピークとなるが、Ba組成 = 1.9では膜厚3 mまでIcが単調に増加することを示した。GdBa1.9Cu3Ox (3 m厚)/CeO2/IBAD-Gd2Zr2O7(GZO)/ハステロイ、0.1 m長で751 A/cm、41 m長GdBa1.9Cu3Ox (2.5 m厚)/CeO2/LMO/IBAD-MgO/IBAD-GZO/ハステロイでほぼすべでの区間で500 A/cm以上のIcを得ている。

IBAD-PLD線材:フジクラ・五十嵐らは人工ピンを導入した500 m級長尺線材の特性について報告した。PLD法で超電導層を成膜する際、純粋なGdBCOターゲットを使用した層とZrO2を混合した層とを混合積層し、人工ピン導入による自己磁場下でのIc低下を抑えつつ3 Tの磁場下でのIcを向上させた。500 m長線材の平均Icは440 Aであった。また、Ic×L値の記録更新として、この線材を5 mm幅に切断、無誘導巻きにしたものの全長Ic測定によって、349.6 A/cm×503.5 m = 176,023 A m/cmが達成された。   

  (住友電工:種子田 賢宏)

4. MgB2

2008年5月に行われた低温工学・超電導学会におけるMgB2関連の発表について報告する。MgB2関連の発表は17件(口頭発表9件、ポスター8件)であった。以下、口頭発表を中心に紹介する。

まず、ポスター発表について紹介する。九州大の大橋らは高密度MgB2バルクの力学特性をIF法によって測定した結果を報告した。無添加のバルクに比べて、SiCとナフタレン共添加バルクの方がビッカース硬さ及び破壊靱性値が向上していることが示された。NIMSの藤井らよりex-situ法による炭素置換MgB2線材の超伝導特性についての報告があった。高磁界Jc特性は改善したが低磁界で特性が下がったことから、炭素置換MgB2の分解を防ぐ方法が必要であると考察していた。日立の高橋らからは、MgB2線材を用いて作製した永久電流スイッチの試験結果が報告され、4.2 Kで1000 A通電時、16時間以上の永久電流運転が可能であることが示された。東北大金研の野島らは、MgB2単結晶を用いて、層状構造に由来したintrinsicピンニングの有無を調べ、これが本質的に起こっていないことが示された。

続いて、口頭発表について紹介する。東大の下山から「MgB2における臨界電流特性に関する調査研究会《のまとめが報告された。JR東海・筑波大の山田らよりエチルトルエン及びSiC粉末を同時添加したin situ PIT法MgB2テープの超伝導特性についての報告があった。無添加もしくはSiC添加線材の充填率は40 ~ 50%であるのに対し、エチルトルエンを添加することによって充填率が70%以上にまで向上したことが示され、その結果から、エチルトルエン添加によるJcの向上の要因の一つとしてコア密度の向上が考えられると報告された。また、エチルトルエン及びSiC粉末の各添加量を変化させた結果、ともに10 mol%添加した試料で最も特性が高いことが報告された。九州大の波多らよりMgB2線材の微細組織に及ぼす炭素系物質添加の影響についての報告があった。また、SEM、TEM観察による結果から、C4H4SやC6H6を添加しても、MgB2結晶粒界や微細な常伝導介在物といった磁束ピン止め点の導入効果は期待できないことを示し、芳香族炭化水素添加によるJc向上の要因は、BサイトへのC置換効果に加え、組織の緻密化と結晶粒粗大化に伴うMgB2結晶粒の結合性向上によって超伝導体内の電流経路が多く確保されたためであると考察していた。東大の花房らは低温短時間で合成したMgB2バルク・テープ線材のX線ラインプロファイル解析の結果を報告した。二種類の平均粒径に大きな違いがあることから、結晶粒径の分布が極めて広く上均一な組織であると結論した。岡山大の桑嶋らはSiCを添加したホットプレスMgB2テープ線材のピンニング特性について報告した。通常の熱処理をした線材と異なり、ホットプレスした線材ではピンニング特性に異方性が見られることを示した。鹿児島大の土井らは、異なる間隔でNi層を導入したMgB2/Ni多層膜のJc-B特性について報告した。Ni層間隔が量子化磁束線格子間隔と一致する磁場で、Ni層が強力なピンニングセンターとして機能することが示された。

 (東京大学:花房 慶、望月 利彦)

5. A15型線材

 A15型線材全体でNb3Sn関連5件、Nb3Al関連5件、V3Gaが1件あった。Nb3Sn線材では新しい反応経路を模索する発展的なものが見られている。Nb3Al線材は、製法の特殊性から研究機関が限られているが、耐ひずみ特性から次世代大型マグネット線材候補として欠かせない存在であり、その意味でも実用的に興味深い内容が報告されている。

 まず東海大の林よりSn-Ta基合金を用いたNb3Sn線材の報告。本製法ではNbとSnがSn-Ta側とNb側とを相互拡散すると考えられており、Nb3Sn相Sn濃度が化学量論組成に近づき優れた強磁場特性を与える。今回新たにロッド法線材試作を行った。Jcは最適化がまだの現状でもJR法と同等。多芯化の点からも興味深い。

 日立電線の大圃からSn-Ti-Cu/Nbジェリーロール法Nb3Sn線材の報告。本製法もNb/Sn-Ta反応と同様の効果が期待される方法で高い強磁場特性を示す。今回Sn合金シートを重ね巻きし、JR部拡散層を厚くした。これは従来JR法で問題だったNb3Sn層の上均一性改善を狙ったもので、今回組織・Jc特性において顕著に改善が見られた。

 徳島大学の岩谷からNb/Ag-Sn拡散生成Nb3Sn線材のMg添加の報告。Ag-Sn合金による拡散反応はCu-Sn合金と比べ拡散速度が非常に遅いことが特徴で、生成Nb3Sn層は0.1 mほど。Mgは熱処理温度を低下させるのに効果的で、今回15,000芯の多芯構造によりJc向上を図った。Nb3Sn層が薄いにもかかわらずnon-Cu Jcは悪くないものであり化合物当りJcは非常に高いものと期待される。

 東北大の西島から事前曲Nb3Sn素線の撚線の報告。事前曲げは化合物線材に歪みを加えるといういわゆる逆の発想でNb3Snの特性を引出すもので、今回さらに発展させてその素線を撚線。300 MPa超の応力設計を考慮し4本のSUS線を含む7本撚線を試作、その通電結果と効果が示された。

 NIMSの伴野からリスタックと呼ばれる方法によるNb3Al線材の磁化特性の報告。これは急冷処理材の再スタックによる極細芯化の方法で、従来材の数分の一以下に芯径を低減。その磁化は例えばRRP Nb3Sn線材と比較して極めて小さく、低磁界上安定性が顕著に改善される。

 日立電線の中川からNb3Al線材の線径柔軟性の報告。Nb3Al線材作製では、急熱急冷処理の特殊性から線径が1.3 mm程度に制限される。そのため電流大容量化に対応しにくい側面があったが、今回装置のリール位置調整などで線材の経験曲げ歪を改善し線径1.5 mmでも従来材と遜色ない特性を得た。

 ポスターセッションでのA15型線材に関する内容は以下。東北大の小黒から残留歪のあるNb3Sn線材Bc2への歪効果の報告。事前曲線材は残留歪状態が異なるが、偏差歪に加え静水圧歪を考慮するとBc2の振舞いをうまく説明できる可能性がある。  NIMSの飯嶋からNb3Al単芯JR法線材の報告。Al厚0.6 mは従来材より大きいが、急熱急冷処理長を延ばすことで反応を完了させることができる。工程簡略化を考えるとAl厚の許容幅の増大は望ましい。

 NIMSの菊池から低銅比Nb3Al線材の報告。銅比0.61でも6 T以下でクエンチ現象が見られないとの報告。

 日立電線の田中からリスタックNb3Al線材の報告。急冷後再スタックによる極細芯化の製造方法で、組織の微細化に伴うJc向上が示唆されている。

 核融合研の菱沼からV3Ga線材におけるMg添加の報告。製法の特徴はCu-50 at%Gaの高Ga濃度粉末を使用することで、最近のNb3Sn線材製法と同様に高濃度GaソースがV3Ga相の化学量論性を押し上げていると思われる。Mg添加もブロンズ法Nb3Sn線材同様のJc向上効果が見られた。   

 

  (物材機構:伴野 信哉)